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■1シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(29) - 選書や分類の問題ではないのです。「ツタヤ図書館」と「公設ツタヤ問題」は、みんなの未来の問題なんです。[図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

このところ、マスコミでも連日の様に「ツタヤ図書館」の問題が取り上げられています。 ここまでの報道を振り返って見ますと、平成27年7月13日付で開示決定された、 「初期蔵書入れ替え費で購入された資料一覧」が、8月5日にツイッター上で公開され、 これがネット上で拡散されていき、 女性セブン *1 、 週刊朝日 *2 といった週刊誌での報道がなされ、9月12日の朝刊各紙での報道につながる 武雄市での選書問題を端緒として、開館直前の海老名市での同様の選書問題発覚に延焼。 小牧市での住民投票の結果を受けて、ついに「ツタヤ図書館」問題として 報道がなされる様になってきたという流れだと思います。

8月5日の @toshikawahara[https://twitter.com/toshikawahara] 氏のツイート

が、今回の一連の報道のきっかけとなった形になっていますが、 武雄市での構想発表時点から「ツタヤ図書館」の問題を追いかけてきた立場 としては、これは一つのきっかけに過ぎず、遅かれ早かれ、 この問題をメディアも取り上げざるを得なくなるだろうと考えてきました。

ところで、最近のメディアの報道で「ツタヤ図書館」の問題を知った方の中には、 「メディアが目立つものを叩いている」という様な認識をされる方がいらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、それは非常に表層的な見方だと思います。
2012年5月の発表以来、各メディアは、ツタヤ図書館構想を概ね好意的に報道してきました。
数も非常に多いので全てを取り上げることはできませんが、 佐賀新聞は改装オープン初日に一面を使った特集記事を組み、ほぼ手放しに評価していますし、 雑誌となりますと、 利用客殺到!佐賀・武雄市図書館の「体が喜ぶ空間」[http://president.jp/articles/-/13950] *3 は、もう全面的に「ツタヤ図書館」賛美と言って良い記事でしたし、 テレビ番組でも、 儲かる「地方自治体」[http://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/20120708/1.html] *4“図書館をTSUTAYAに”樋渡市長の新たな挑戦[http://togetter.com/li/335550] *5TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?[http://togetter.com/li/494546] *6 といった放送では、市(CCC)の主張をほぼ全面的に採用して番組が構成されてきました。

当時、メディアが一方的な意見を採用したことについては、色々思うところはある訳ですが、 「官はお役所仕事」「市民目線に立っていない」「税金のむだづかい」と言った、 これまでの公共図書館に対する分かりやすい誹謗や中傷に、 マスコミが飛びついた結果だと私は考えています。
これらを「ウソ」と主張するだけの証拠や議論は既に積み重ねられており、 本稿でこれを一つ一つ検証することはしませんが、 海老名でも問題となった「ツタヤ分類」について、当時の報道を確認しておきたいと思います。

「使い勝手を重視 システム変更」, 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった? 「武雄市21進分類法」, 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?
2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?

「提供者目線ではなく、利用者目線」[http://poly-tank.jp:81/lf-forum/takeo/#15] 、 「サービス提供側のエゴを排除」 *7 と主張してきた訳ですが、その実態は 海老名市中央図書館の分類と排架[http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/04/news016.html] に見る通りです。
「利用者目線」「サービス提供側のエゴを排除」という主張をするために、 独りよがりの「独自分類」を押し付けたことで損なわれたものは大きいです。
他の図書館でNDCを使用してきた人は、自分が読もうとしている本が、どの棚にあるかが大体わかります。 しかし、武雄や海老名ではその館独自の分類がされ、それに基づいて排架が行われているため、 聖書に関する本を探す人は、旅行の棚を見に行かなければ「出エジプト記」を目にすることはできませんし、 ある作家の小説を探している人は、旅行の棚や手紙の書き方の棚などをくまなく見て行かなければ、 探している本に出合えない場合があります。
求めている本の名前が分かっていれば、検索機で探すことができる訳ですが、 図書館の開架は、本の名前やその本を探すためのキーワードを持っていなくても、 目的の本を見つけ出すことができるという大切な機能を提供しています。
このあたり詳しくは、 図書館での調べものの話(NDCについて) という記事が、 非常に良く書かれているのでお読み頂ければと思いますが、 図書館での「本の発見」というのは、求めているものを見つけ出すことなのです。
分類を細かく見て行けば、そこに探していることに書かれた本が集まっている。 そしてそれらの本が近くに並んでいる。そういう分類と排架がされているからこそ、 数十万冊の蔵書がある図書館から、自分が関心を持っていて、 まだ読んだことが無い本を発見することができるのです。
そして、これはNDCを利用していなくても、あるいはその図書館がNDCを使用していなくても、 図書館での分類に共通して要求される機能です。 海老名市中央図書館の高橋館長は、独自のツタヤ分類について「発見性を重視した」と主張していますが、 その「発見」は、街を目的無く歩き回って、こんなものがあったのかと、 思わぬものを発見する様な「発見」なのでしょう。
しかし、図書館は目的を持った人が利用しますし、利用者の時間を節約し、 必要な本を容易に得られるようにすることは図書館の使命です。 思わぬものを発見するにしても、興味を持った分野から発見したいのは当然です。
私は、高橋館長のこの発言は、あまりにも図書館の機能を知らない、 あるいは使命を知らないための発言だと考えます。

さらに、ツタヤ図書館では、その分類や基準を公開していません。 分類排列についての質問に対し、海老名市中央図書館の高橋館長は、「企業秘密なので回答を差し控える」としたのです。

分類や排列は、様々な本の分類・排列を、図書館と利用者が共有することで役に立つものです。 利用者が探している本を、図書館がどう分類しどこに排架するかを知っているから、求める資料を探せるのです。
分類が秘密にされれば、「発見性を重視」どころか、タイトルやキーワードを知っていないと、 求める資料にさえ出会えないことになります。
図書館の機能を実現するために必要な情報さえ、「企業秘密」として公開しない… これこそ「提供者のエゴ」「提供者目線」だと考えます。 また、この一点だけをとっても、「ツタヤ館」は図書館ではなく、 その指定管理事業者が図書館の業務を行う資格が無いことを物語っている話だと考えます。
まえがきと分類の話だけで、ここまで書いてしまいましたが、この話や選書の話は、 「ツタヤ図書館」問題においては、具体的でわかりやすいものの、ある意味では枝葉の話に過ぎません。 図書館を図書館として使えなくなる様な大きな問題が「枝葉」と言える位、私は、 ツタヤ図書館問題の根っこは深いものだと考えています。
続編では、そういった問題を掘り下げて行き、図書館を利用する市民、利用しない市民含めて、 この問題が地域や市民みんなの問題につながっていくという事をご説明したいと思います。
もし、この記事をきっかけに、この問題に関心を持たれましたら、 小牧市の住民投票に向けて書いた 小牧市に市民のための図書館を や、この日記の シリーズ武雄市TSUTAYA図書館 過去記事一覧 をお読み頂ければ幸いです。

*1: 女性セブン, 2015-09-10, 佐賀・武雄市民は怒ってます!「リアル図書館戦争」
*2: 週刊朝日, 2015-09-11, 武雄市TSUTAYA図書館 関連会社から“疑惑”の選書
*3: 2014-09-01, プレジデント, 利用客殺到!佐賀・武雄市図書館の「体が喜ぶ空間」
*4: 2012-07-08, がっちりマンデー!!, 儲かる「地方自治体」
*5: 2012-07-09, ニュースの深層 #71, 「市のHPをフェイスブックに載せた理由」樋渡啓祐武雄市長
*6: 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?
*7: 見えてきた未来建築の突破口 書店の知恵で公立図書館を刷新 : 利用者優先のサービスで来館者は5倍増. 日経アーキテクチュア.. (1000):2013.5.25. 30-33 ISSN 0385-0870[http://id.ndl.go.jp/bib/024476254]

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Bio:前田勝之(まえだかつゆき)。長崎在住。コンサル、SE、プログラマー、 なんとか株式会社代表、非常勤講師(情報セキュリティ)。 セキュアド、テクニカルエンジニア(SV,NW)。サーバ管理とWeb日記を10年ほど。 ネットとリアルの接点に関心あり。食べること・歌うこと・愛すること・作ること・飲むこと。おいしいものがぜんぶすき。

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