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■1シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(29) - 選書や分類の問題ではないのです。「ツタヤ図書館」と「公設ツタヤ問題」は、みんなの未来の問題なんです。[図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

このところ、マスコミでも連日の様に「ツタヤ図書館」の問題が取り上げられています。 ここまでの報道を振り返って見ますと、平成27年7月13日付で開示決定された、 「初期蔵書入れ替え費で購入された資料一覧」が、8月5日にツイッター上で公開され、 これがネット上で拡散されていき、 女性セブン *1 、 週刊朝日 *2 といった週刊誌での報道がなされ、9月12日の朝刊各紙での報道につながる 武雄市での選書問題を端緒として、開館直前の海老名市での同様の選書問題発覚に延焼。 小牧市での住民投票の結果を受けて、ついに「ツタヤ図書館」問題として 報道がなされる様になってきたという流れだと思います。

8月5日の @toshikawahara[https://twitter.com/toshikawahara] 氏のツイート

が、今回の一連の報道のきっかけとなった形になっていますが、 武雄市での構想発表時点から「ツタヤ図書館」の問題を追いかけてきた立場 としては、これは一つのきっかけに過ぎず、遅かれ早かれ、 この問題をメディアも取り上げざるを得なくなるだろうと考えてきました。

ところで、最近のメディアの報道で「ツタヤ図書館」の問題を知った方の中には、 「メディアが目立つものを叩いている」という様な認識をされる方がいらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、それは非常に表層的な見方だと思います。
2012年5月の発表以来、各メディアは、ツタヤ図書館構想を概ね好意的に報道してきました。
数も非常に多いので全てを取り上げることはできませんが、 佐賀新聞は改装オープン初日に一面を使った特集記事を組み、ほぼ手放しに評価していますし、 雑誌となりますと、 利用客殺到!佐賀・武雄市図書館の「体が喜ぶ空間」[http://president.jp/articles/-/13950] *3 は、もう全面的に「ツタヤ図書館」賛美と言って良い記事でしたし、 テレビ番組でも、 儲かる「地方自治体」[http://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/20120708/1.html] *4“図書館をTSUTAYAに”樋渡市長の新たな挑戦[http://togetter.com/li/335550] *5TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?[http://togetter.com/li/494546] *6 といった放送では、市(CCC)の主張をほぼ全面的に採用して番組が構成されてきました。

当時、メディアが一方的な意見を採用したことについては、色々思うところはある訳ですが、 「官はお役所仕事」「市民目線に立っていない」「税金のむだづかい」と言った、 これまでの公共図書館に対する分かりやすい誹謗や中傷に、 マスコミが飛びついた結果だと私は考えています。
これらを「ウソ」と主張するだけの証拠や議論は既に積み重ねられており、 本稿でこれを一つ一つ検証することはしませんが、 海老名でも問題となった「ツタヤ分類」について、当時の報道を確認しておきたいと思います。

「使い勝手を重視 システム変更」, 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった? 「武雄市21進分類法」, 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?
2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?

「提供者目線ではなく、利用者目線」[http://poly-tank.jp:81/lf-forum/takeo/#15] 、 「サービス提供側のエゴを排除」 *7 と主張してきた訳ですが、その実態は 海老名市中央図書館の分類と排架[http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/04/news016.html] に見る通りです。
「利用者目線」「サービス提供側のエゴを排除」という主張をするために、 独りよがりの「独自分類」を押し付けたことで損なわれたものは大きいです。
他の図書館でNDCを使用してきた人は、自分が読もうとしている本が、どの棚にあるかが大体わかります。 しかし、武雄や海老名ではその館独自の分類がされ、それに基づいて排架が行われているため、 聖書に関する本を探す人は、旅行の棚を見に行かなければ「出エジプト記」を目にすることはできませんし、 ある作家の小説を探している人は、旅行の棚や手紙の書き方の棚などをくまなく見て行かなければ、 探している本に出合えない場合があります。
求めている本の名前が分かっていれば、検索機で探すことができる訳ですが、 図書館の開架は、本の名前やその本を探すためのキーワードを持っていなくても、 目的の本を見つけ出すことができるという大切な機能を提供しています。
このあたり詳しくは、 図書館での調べものの話(NDCについて) という記事が、 非常に良く書かれているのでお読み頂ければと思いますが、 図書館での「本の発見」というのは、求めているものを見つけ出すことなのです。
分類を細かく見て行けば、そこに探していることに書かれた本が集まっている。 そしてそれらの本が近くに並んでいる。そういう分類と排架がされているからこそ、 数十万冊の蔵書がある図書館から、自分が関心を持っていて、 まだ読んだことが無い本を発見することができるのです。
そして、これはNDCを利用していなくても、あるいはその図書館がNDCを使用していなくても、 図書館での分類に共通して要求される機能です。 海老名市中央図書館の高橋館長は、独自のツタヤ分類について「発見性を重視した」と主張していますが、 その「発見」は、街を目的無く歩き回って、こんなものがあったのかと、 思わぬものを発見する様な「発見」なのでしょう。
しかし、図書館は目的を持った人が利用しますし、利用者の時間を節約し、 必要な本を容易に得られるようにすることは図書館の使命です。 思わぬものを発見するにしても、興味を持った分野から発見したいのは当然です。
私は、高橋館長のこの発言は、あまりにも図書館の機能を知らない、 あるいは使命を知らないための発言だと考えます。

さらに、ツタヤ図書館では、その分類や基準を公開していません。 分類排列についての質問に対し、海老名市中央図書館の高橋館長は、「企業秘密なので回答を差し控える」としたのです。

分類や排列は、様々な本の分類・排列を、図書館と利用者が共有することで役に立つものです。 利用者が探している本を、図書館がどう分類しどこに排架するかを知っているから、求める資料を探せるのです。
分類が秘密にされれば、「発見性を重視」どころか、タイトルやキーワードを知っていないと、 求める資料にさえ出会えないことになります。
図書館の機能を実現するために必要な情報さえ、「企業秘密」として公開しない… これこそ「提供者のエゴ」「提供者目線」だと考えます。 また、この一点だけをとっても、「ツタヤ館」は図書館ではなく、 その指定管理事業者が図書館の業務を行う資格が無いことを物語っている話だと考えます。
まえがきと分類の話だけで、ここまで書いてしまいましたが、この話や選書の話は、 「ツタヤ図書館」問題においては、具体的でわかりやすいものの、ある意味では枝葉の話に過ぎません。 図書館を図書館として使えなくなる様な大きな問題が「枝葉」と言える位、私は、 ツタヤ図書館問題の根っこは深いものだと考えています。
続編では、そういった問題を掘り下げて行き、図書館を利用する市民、利用しない市民含めて、 この問題が地域や市民みんなの問題につながっていくという事をご説明したいと思います。
もし、この記事をきっかけに、この問題に関心を持たれましたら、 小牧市の住民投票に向けて書いた 小牧市に市民のための図書館を や、この日記の シリーズ武雄市TSUTAYA図書館 過去記事一覧 をお読み頂ければ幸いです。

*1: 女性セブン, 2015-09-10, 佐賀・武雄市民は怒ってます!「リアル図書館戦争」
*2: 週刊朝日, 2015-09-11, 武雄市TSUTAYA図書館 関連会社から“疑惑”の選書
*3: 2014-09-01, プレジデント, 利用客殺到!佐賀・武雄市図書館の「体が喜ぶ空間」
*4: 2012-07-08, がっちりマンデー!!, 儲かる「地方自治体」
*5: 2012-07-09, ニュースの深層 #71, 「市のHPをフェイスブックに載せた理由」樋渡啓祐武雄市長
*6: 2013-04-28, 真相報道 バンキシャ!, TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった?
*7: 見えてきた未来建築の突破口 書店の知恵で公立図書館を刷新 : 利用者優先のサービスで来館者は5倍増. 日経アーキテクチュア.. (1000):2013.5.25. 30-33 ISSN 0385-0870[http://id.ndl.go.jp/bib/024476254]

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■1シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(30) - 検証「9つの市民価値」[図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

武雄市新図書館「9つの市民価値」とその現状 前回の、 選書や分類の問題ではないのです。「ツタヤ図書館」と「公設ツタヤ問題」は、みんなの未来の問題なんです。[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151017S1] では、図書館の機能がないがしろにされた一つの例として、現在マスコミで取り上げられている問題の中から、分類と排列 *1 の話を取り上げました。
武雄市図書館を改修する際に、当時、武雄市長だった樋渡氏が改修の目的として掲げた「9つの市民価値」というものがあります。実際に武雄市図書館が再オープンし、通常の運営がなされるようになってきた今、改めて、この「市民価値」なるものを検証しておきたいと思います。
この「9つの市民価値」は、武雄市図書館・歴史資料館の改修にあたり、当時の武雄市の市長であった樋渡氏が、 武雄市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例[https://www.city.takeo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/r302RG00000138.html] 第5条の「公の施設の性格、規模、機能等を考慮し、設置目的を最も効果的かつ効率的に達成することができる団体があると認められるとき。」を適用して、 カルチュア・コンビニエンス・クラブへの特命契約を行う理由として主張 したものです。
公共図書館の目的は、

(この法律の目的)
第一条  この法律は、社会教育法 (昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。

に見る通りです *2 し、この改修事業は市町村合併特例事業として行われた事業で、その目的のために合併特例債経由で国税が入っている事業です。 その 事業計画書[https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/%5B%E4%BD%90%E8%B3%80%E7%9C%8C%5D%20H25-04-15%20%E5%B8%82%E7%94%BA%E6%9D%91%E7%AC%AC170%E5%8F%B7%E9%96%8B%E7%A4%BA%E6%96%87%E6%9B%B8%20%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%8B%A1%E5%85%85%E4%BA%8B%E6%A5%AD%20%E5%B8%82%E7%94%BA%E6%9D%91%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%89%B9%E4%BE%8B%E4%BA%8B%E6%A5%AD%20%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%9B%B8.pdf] によれば、

【事業の目的】
武雄市図書館は新市における唯一の図書館として、蔵書の充実や開館時間の延長等の実施で市民のニーズに対応してきたが、更に年中無休・開館時間の延長・開架図書の増大・検索システム及び自動貸出機の導入などで 図書館機能を充実させる 。ついては、来館者の増加が期待され、合併による新市の個性ある図書館の確立を図るとともに、一体性の確立を目指す。

との記述からも、「武雄市図書館機能拡充事業」という事業名からも、 「図書館機能を充実」させることがその事業の目的 だったわけです。
これらの背景から、「武雄市図書館機能拡充事業」における「9つの市民価値」を、「図書館機能拡充」という観点から検証することは、大きな意味を持つわけです。
本稿では、「図書館機能拡充」という観点から、この「9つの市民価値」について検証してみたいと思います。

20万冊の知に出会える場所:

従来の図書館と蔵書数はほとんど変わっていません 。しかし、「市民が利用できる資料が10万冊から20万冊に倍増」等と言う説明がなされてきました。単に、 閉架にあった本を開架にした 訳です。

6割ぐらいですかね、それが 閉架になっていて、市民の皆さんが直接触れてこなかった ということが、私はそこが問題
やっぱり本は手にとらないとだめ です。そういった中で、これが 半分以上が閉架になっている ということ自体、私は問題だと、前から 図書館をよく使う者の一人として 思っておりましたので、こういうふうに出していく

2013-04-28 閲覧室内の高層書架。真相報道 バンキシャ! TSUTAYA経営の企業が運営…佐賀・武雄市の新たな公立図書館どうなった? 図書館の閉架の役割を理解していない発言だと思いますが、結果できあがったものは、市民が手に取るどころか、タイトルを見ることもできない高い高い書架でした。
この書架が、どれほど非常識なものであるかは、 武雄市の新図書館では高さ3.9〜4.6m、12〜13段の巨大な書架が使われるとのことです[http://goldenhige.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/39m46m1213-1990.html] にまとめられた図解をご覧ください。
この高い書架、入店して2階の壁一面に広がるものが画像でも有名ですが、閲覧室内にもああいった書架が作られ、結果として非常に圧迫感を感じる空間となっています。
画像は、2013年04月28日放送の「真相報道 バンキシャ!」によるものですが、「約20万冊が手に取れる」とのキャプションが入っています。しかし、この書架の高さ、写り込んでいる来館者と比較してみて下さい。高い脚立を用意すれば「手に取れる」かも知れませんが、この高さの本を取り出すことは、利用者自身にできることではないため、スタッフの方にお願いすることになります。 この映像に「約20万冊が手に取れる」とのキャプションを入れることに疑問を感じなかったのでしょうか

「やっぱり本は手にとらないとだめ」「半分以上が閉架になっているということ自体、私は問題」と主張して実施した開架化の結果が、開架とは名ばかりの手の届かない高層書架 です。
開架と閉架について[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20120720S1] *3 で述べた通り、図書館の閉架には閉架の役割があります。貴重な本を保存する事だけが閉架の役割ではないのです。
まず、開架が利用者がブラウジングをしながら本を選ぶことができるというメリットを持つ一方、閉架には同じ面積により多くの本を収容できるというメリットがあります。
次に、内容が古くなった本や旧版を閉架に移動することによって、開架の棚の鮮度を維持するという役割もあります。過去の情報を調べるために、古くなった資料を必要とする利用者と、最近の本の中から自分の目当ての本を探したい利用者の両方のニーズを適えるためには、 開架と閉架を使い分けるのが有効 な手段です。 古い本を何も考えずに閉架から開架に出して来れば、開架の棚には、古い本と新しい本が雑然と並ぶことになります。結果、棚全体の鮮度が悪くなるのですが、それよりも深刻な問題として、古い内容であることに気付かないまま利用される問題があります。
大学図書館などであれば、利用者が自ら資料の出版年と自分が知りたい分野の進展を理解していて、情報の鮮度を評価しながら利用するため、問題にならないかも知れませんが、公共図書館の利用者の中には、例えば病気に罹った際に、あるいは 法律上の問題が発生した際[http://lomax.cocolog-nifty.com/apprentice/2013/11/1-0055.html] に、図書館で参考になる本を探そうとする方がいます。そして、その様な「困りごとがあって図書館を利用する」利用者は、図書館の利用に慣れてはいません。
古い本が閉架に入り、開架には新しい本が並べられている状況であれば、最新の情報に基づいて書かれた本を手に取ったはずの利用者が、古い本と新しい本が開架で混在しているために、 古い情報に基づいて書かれた本を手に取って、古い情報に基づく誤った判断をしてしまう ということが起きるのです。例えば、治療方法の進歩が著しい医療分野や、改正が度々行われる法律・税制の分野では、そういった問題が起きやすいでしょう。
この様に、公共図書館で全ての本を開架に出すということ自体、貴重書の保存の問題を措いても、デメリットも生じます。

武雄市図書館・歴史資料館 改装前の書架 (2012-09-23撮影) ところで、手の届かない高層書架の手の届かない部分が閉架の役割を果たしているかと言うと、そうではありません。 武雄市図書館訪問メモ(1)法律書の同一タイトル版違い(千代田ネタ付)[http://lomax.cocolog-nifty.com/apprentice/2013/11/1-0055.html] でも報告されている通り、開架には雑然と新旧の本が並んでいますし、手が届かない部分の本を取り出そうと思うと、スタッフ数人がかりで巨大な脚立を運び、本を取り出し、脚立を戻す。ということをお願いしなければなりません。普通の利用者には頼みにくいことだと思いますし、事実、報告等によれば、 脚立を使って本を取り出すのは、年に数回だったと言いますから、あの巨大書架が、実際に本の利用を妨げている ことが分かります。
一方、閉架であれば、取り出すのも簡単ですし、少なくとも、2階のキャットウォークであの巨大脚立に上る様な危険な作業はしなくても済みます。利用者としても気軽にお願いできた訳です。
さらに、閉架であれば収容密度を上げられますので、開架部分の書架の間にもっと余裕を取ることができたはずです。
武雄市図書館・歴史資料館 改装前の書架 (2012-09-23撮影) 写真は、改修前の武雄市図書館ですが、棚の前でブラウジングしている利用者がいても、不自由なく後ろを通ることができますし、車いすでも通行ができる程度に通路には余裕がありました。
改修後の図書館では、ブックトラックを通すのに苦労するほど、通路の余裕が無くなってしまいました。
なぜ、図書館の機能を損なう様な高層書架を導入してまで全開架を行う事を主張したのでしょうか。
これまで述べてきました通り、閉架を廃止すれば図書館を運用する上で、不便なことも起こます。収容密度も上げられませんから、棚を詰め込んだ結果、通路の余裕は無くなります。ブラウジングも不自由です。さらに、手が届かない上に、閉架よりも資料の出し入れがしにくい高架書架を使う事になります。考えられないことの様に感じないでしょうか。そして、このコンセプトは海老名でも小牧でも引き継がれています。
この問題。図書館の機能を考えると、どう考えてもおかしい訳ですが、「ツタヤ館」と作るためだったと考えると、その理由が理解できます。
まず、 スタバとツタヤの店舗のスペースを作るために、閉架書架などのバックヤードを削る 必要がありました。そのために、閉架は廃止とする必要が生じました。
また、武雄・海老名の「ツタヤ館」に入店して、店舗スペースから見えるのは、圧倒的な量の本です。あれを見て「おしゃれ」だと感じる方は多いと思うのですが、結局のところ、 図書館の本が手の届かない高い棚に追いやられて、店舗の飾りにされている というのが実態だと考えます。

雑誌販売の導入:

これまで図書館で貸出を受けられた雑誌の購読をやめて、ツタヤで販売するようにする… ツタヤの店頭の雑誌は、あくまで売り物であり、貸出を受けることも、コピーを取ることもできません。バックナンバーも残りません。 図書館機能の拡充という観点から評価できるものではありません。

映画・音楽の充実:

ツタヤのレンタル店が入るというだけの話です。一方で、図書館で所蔵していたAV資料は大量に廃棄されました。これも、図書館機能の拡充という観点から評価できるものではありません。

文具販売の導入:

結局、実現しなかった様ですが、ツタヤが物販をするというだけの話です。これも、図書館機能の拡充という観点から評価できるものではありません。論外です。

電子端末を利用した検索システム:

以前からOPACはありました。事業計画に掲げたにも関わらず、むしろ使いにくくなったと不評な様です。蔵書検索システムの使い勝手は、ITシステムだけではなく、それ以前の蔵書の分類や、実際の棚の整理状況に大きく影響されます。
仮に、検索システムが改善されたという主張が正しいにも関わらず、実際には資料が探しにくくなったのだとすれば、分類や排架状況がそれ以上に劣化したという事であって、全体として図書館機能の拡充という観点から評価できるものではないと考えます。

カフェ・ダイニングの導入:

カフェを利用する利用者は一定数いると思いますが、カフェを作るために、図書館としての機能が徹底的に犠牲にされました。スタバで飲み物を買わないと利用できない席が設けられ、カフェ利用者のために図書館利用者が追い出されるという状況になってしまっています。お金が使えない中高生は、向かいの商業施設のフードコートに流れる… 図書館のためのカフェではなく、カフェのための飾りにされた図書館 という状況になりました。
利用者のためにカフェが整備されたのであれば、図書館機能に貢献したと言えたかも知れませんが、武雄市の今回の改修においては本末転倒しており、 図書館機能の拡充という観点からは、悪影響しかもたらさなかったと言えると思います。

「代官山 蔦屋書店」のノウハウを活用した品ぞろえやサービスの充実:

なんら成果は示されていません。開示請求を通じても、「ノウハウは秘密」という事しか示されません。現在、明らかになっているノウハウは、新古書店から本を購入してくることと、先に見たような ツタヤ独自の分類や排架[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151017S1] です。
図書館機能の拡充という観点から、ポジティブな評価をするのは困難だと考えます。

Tカード、Tポイントの導入:

特定企業への利益提供に過ぎません。Tカードの費用も、Tカードに対応するためにシステムを改修する費用も税金から負担していますし、さらにTポイントの費用も元はと言えば税金です。 これほど露骨な利益提供を「市民価値」と主張する厚顔無恥にあきれます が、CCC以外の指定管理者に変更しようとする際も、直営に戻す際も、カードの再発行が必要になりますし、システムの改修も必要となります。いわゆる ベンダーロックイン です。
さらに、Tカード導入にあわせ、Tカードへの切り替えの有無を問わず利用者登録の切り替えを必須としたため、市内の登録利用者も激減し、改修前の登録利用者36,184人 *4 から、2015年3月末時点でも市内の登録者数は、14,217人 *5 と、 改修前の半数以下 にとどまっています。
これは、必ずしもTカード導入だけが原因ではなく、当時の図書館利用者にとっての図書館としての利用価値が低下したという側面があるのかも知れませんが、利用登録者数が半減したのは事実です。利用カードを作るのが面倒という意識が、図書館の利用と貸出に影響を与えている可能性はあると思います。
武雄市内の小学校で配布された図書館利用カード申込書 また、もちろんではありますが、Tカードという、特定事業者が個人情報を握ることになる共通ポイントカードを公共図書館に導入することも、様々な問題を引き起こします。
児童に対して、読書推進の一環として公共図書館の利用を促すことは、一般には推進されて良いことだと思います。前述の様に、改修後の市内の登録人数が低迷していることもあり、2015年の3月には、市内の小学校で、図書館利用カードの一斉作成が呼び掛けられました。写真は、その際に配布された図書館利用カード申込書一式です。利用者カードとしてTカードを採用しているため、 Tカードの案内を学校を通じて配布する[http://dechnostick.hatenablog.com/entry/2015/02/28/042015] ということが行われることになります。もちろん、Tカードを作成することが、学校から強制される訳ではないのですが、 特定事業者の共通ポイントカードの案内が教育現場で行わることには違和感 を覚えます。
この様に、図書館機能の拡充という観点からTカードの導入を評価することは、全くできないと考えます。 複数の自治体で、あの同じ様なデザインのTカードが導入されて行く様は、「図書館機能の拡充」どころか、私企業による図書館と利用者の支配の象徴 だと私は感じます。

365日、朝9時〜夜9時までの開館時間:

ここまで読んでこられて、他のものはともかく、これだけは「市民価値」の様に感じられる方もおられるのではないでしょうか。この点については、これまでの他の項目に比べれば、十分な議論が必要だと思います。

次回は、この開館時間について検討してみたいと思います。

*1: 「配列」「配架」ではなく、「排列」「排架」という言葉を使うのは、図書館法や図書館学の分野では、「排列」「排架」が一般的に用いられるからです。一般にも、一定の規則を持って並べるということを強調したい際には「排列」が用いられる様です。
*2: 第2条中の「レクリエーシヨン」については、今日では誤解を生じることがある単語ですので補足しておきます。英語で言えば「re-creation」(再創造)と、これから派生した「recreation」(気晴らし、娯楽、余暇、レジャー)に分けられるのですが、図書館法では前者の「re-creation」が強く意識されています。その根拠は、 図書館法の「レクリエーション」について[http://dechnostick.hatenablog.com/entry/2013/04/14/040253] に示されています。
*3: 2012年7月時点の記事で、この時点では改修後の図書館のレイアウトや高層書架が使われることになることは判明していなかった点をお含みおきください。
*4: 武雄市図書館 図書館システム更新業務仕様書[https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/%5B%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%5D%20H27-03-30%20%E6%AD%A6%E5%B8%82%E6%95%99%E6%96%87%E7%94%9F%E7%AC%AC153%E5%8F%B7%E9%96%8B%E7%A4%BA%E6%B1%BA%E5%AE%9A%20%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%8B%A1%E5%85%85%E4%BA%8B%E6%A5%AD%EF%BD%A5%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%9B%B4%E6%96%B0%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%96%87%E6%9B%B8.pdf] による。
*5: 武雄市図書館 平成26年度報告書[https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/%E5%AF%84%E8%B4%88%E8%B3%87%E6%96%99/%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%20%E5%B9%B3%E6%88%9026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf] による。

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■1 シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(31) - 続・検証「9つの市民価値」[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151018S1][図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

みんなの図書館 1997-11 前回の、 検証「9つの市民価値」[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151018S1] で、宿題にしていた「365日、朝9時〜夜9時までの開館時間」について検討したいと思います。
まず、 「図書館をいつ開けるか?」[http://id.ndl.go.jp/bib/4315995] *1 という問題。決して簡単な問題ではありません。
長時間開いていた方が便利。休日が無い方が便利。と、多くの方が一見、感じられると思うのですが、それが本当に図書館サービスの向上に資するかということで言えば、ただ長時間開いている、毎日開いているというだけでは、必ずしもサービスが向上するとは言えないのです。
このことを検討するためには、図書館の費用構造や、図書館サービスとは何か、そもそも開館時間の延長は何を目的としたものなのかといった議論が必要になりますので、今回はこういった、開館時間の延長を考えるためのいくつかの背景を説明してみたいと思います。

図書館の費用構造:

公共図書館の運営経費の構造ですが、もちろん図書館毎に状況の違いはありますが、ほぼ半分がスタッフの人件費に充てられているという状況と想像して頂いて間違いはないと思います。
人的なサービスを提供する施設である以上、これは当然の構造なのですが、この費用構造の側面から見て、費用対効果が最大化されるポイントを検討することができます。
非正規雇用の割合を増やしていけば、開館時間の延長には対応しやすくなりますが、これは図書館サービスの質的な低下を伴います。非正規雇用の人が提供するサービスが低いという事では無く、不安定な勤務形態がもたらす結果です。
人件費が費用構造の中で大きいウェイトを占めているという構造を考えますと、開館時間を延長する事は、人件費一定という制約の下では、質の低下をもたらすということです。

図書館サービスとは何か:

開館時間の延長の声が多い背景には、開館時間を延長することにそれほどのコストが掛かるとは思えないという理由もある様に思います。
例えば、コンビニやレンタル店が深夜まで、あるいは24時間開店しているのと同様に、図書館も開館すれば良いと考えられるのでしょう。貸出や返却は、バイトでもできる。そう難しいことでは無いように思えます。
しかし、図書館が提供するサービスの中で、本の貸出はごく一部のサービスに過ぎません。
利用者が図書館資料を利用する上での相談に応じる、レファレンスという大切な役割があります。貸本屋と図書館を分けている役割の一つと言って良いと思います。
もちろん、この他にも図書館が担っている役割はたくさんあります。しかし、その時間に来館する利用者にレファレンスサービスを提供しないのであれば、「図書館サービスを提供している」とは言えないと思います。

開館時間延長の目的:

ここで、「レファレンスサービスなんていうのは一部の利用者しか利用しないサービスなのだから、貸出さえやってくれれば良いんだ」という意見もあるのではないかと思います。
確かにそれは考え方としてはありだと思います。貸出機能だけは夜間も提供する様にしようという考え方です。
実は、そういうサービスを提供している図書館は既にあります。貸出ロッカーを使用すれば、無人で24時間貸出が可能となる訳です。
目的が「貸出時間の延長」なのだったら、図書館全体を開館しておく必要は無く、貸出ロッカー等を利用すれば、人件費だけでなく光熱費 *2 も節約できますし、夜間等と言わず、24時間、貸出・返却に対応することも可能になるのです。

まとめ:

こうやっていくつかの論点を見てきましたけれど、私はツタヤ館の開館時間と言うのは、公共図書館としての機能の面から見た場合、中途半端な設定だと考えます。
図書館のフルサービスを提供するのであれば、日中でさえレファレンスカウンターにスタッフがいないという状況はあり得ませんし、休館日や夜間にしか、貸出を受けられない利用者に貸出サービスを提供しようと言うのであれば、自動貸出機を導入している位ですから、貸出ロッカーでの提供は考慮されて然るべきだったと思います。
では、どう考えて今の開館時間になっているか。結局のところ、ツタヤやスタバの営業時間に合わせただけなのではないかと考える訳です。
ツタヤ館の構造。店舗だけ営業するという事が難しい構造になっています。例えば、蔵書点検で図書館だけを休館するとか、店舗の営業時間を延ばすという事が難しい訳です。
これは、商業施設と公共施設を混ぜ込んだために生じた重大な欠陥だと思います。
建築の世界で使われる「縁を切る」という言葉があります。建築物の構造上、お互いに影響を与えない様に、敢えて切り離すことを言うのですが、この「縁の切り方」という見方は、複合施設のデザインを見る上で大きなヒントを与えてくれるように思います。 お互いの独立した機能には影響を与えない様にしつつ、意匠上の一体感や相乗効果を望める…複合施設にあっては、そういうデザインが理想だと思うのです。
そういう意味で、ツタヤ館とは異なるコンセプトを持ってデザインされた施設として、「桶川マイン」を見ています。一体感は持たせながら、独立して営業できるようになっている訳です。
こういう施設であれば、お互いの施設にあった営業形態を選びながら、相乗効果を望めたのかも知れません。

(2015-10-25)本稿書きかけという感じもあるのですが、このままいじっていると、いつまでたっても公開できない様な気がするので一旦公開します。いつか追記をするか、別の記事で。

*1: 特集 図書館をいつ開けるか?. みんなの図書館 / 図書館問題研究会 編.. (通号 247) 1997.11. 1〜61 ISSN 0386-0914
*2: 公共図書館の経費の中でも、結構な割合を占めます。資料費より多いというのは稀だと思いますが、資料費と比較できる程度の割合になっている館が多いと思います。

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2015年10月26日(月)<< 前の日記 | 次の日記 >>
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■1シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(32) - 10月26日付 文化通信「TRC、CCCとの関係解消へ」[図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

文化通信 2015-10-26大きいニュースが飛び込んできました。10月26日付の文化通信1面、「TRC、CCCとの関係解消へ」との見出しで、TRC側からのJV解消の意向を報じています。
TRCの掲載情報[http://www.trc.co.jp/index.html] にも、「文化通信に弊社社長・石井の記事『TRC、CCCとの関係解消へ』が掲載されました。」とあり、18:54現在、これを否定する様なコメントが出ていないところからも、TRCとしての発表とみなして良いようです。
記事には「図書館運営に対する理念の違いで」とある様に、TRCの理念とCCCのやり方は当初から随分、食い違っていたように思います。
TRCの トップからのメッセージ[http://www.trc.co.jp/company/index.html] には、以下の様にあります。

図書館は地域に根ざし、地域に暮らす人びとを支え、自立した個人を育てる教育機関です。民主主義が一人ひとりの健全で良識ある判断力と経済的自立を前提としていることを鑑みると、生涯学習の場としての図書館の充実こそ民主主義の砦であるといえます。

海老名市立図書館指定管理業務 打合議事録, 平成26年2月12日 図書館をこの様に位置付けているTRCと、公共図書館を商業施設に作り替えるCCC。理念が違うのは最初から分かり切っていた事なのではないかと思います。
私自身は、TRC-MARCや長崎市立の運営については高く評価をしながら、一方でアロマサービスやTRC-DLについては疑問を感じ、CCCとのJVについても、ビジネスとして利益を上げることを強く意識せざるを得ない状況がTRCをその様に変質させていくのか、そうであるとするならば、価格競争に陥りがちな指定管理者制度と言うシステムあるいは多くの自治体での運用に問題があるのかも知れないといったことを考えてきました。質が評価されるのであれば、TRCは十分戦える企業のはずです。
今回、そもそもCCCと関係を持ったことについては、非常に残念に思いましたが、その関係を解消、しかも、理念の違いを理由にしてその解消を行ったことに関しては高く評価したいと思います。少なくとも、TRCは図書館の担い手としての信頼の一部を回復したと思います。そして、その判断は、長期的に見て、TRCの事業にとってはプラスに作用すると確信しています。

関係の解消につながった「理念の違い」。その一端を物語る資料があります。平成26年2月12日にTRC本社で行われた打ち合わせの議事録です。

海老名市担当)図書館の雑誌が減ることが懸念される。
CCC担当)どのタイトルを残すかは協議させてほしいが、基本的に雑誌は販売を中心にする。販売のタイトル数を大幅に増やすので、館内閲覧できるタイトル数としては大幅増となる。
バックナンバーについては、ILLやドキュメントデリバリを利用したい。どの図書館にもあるタイトルを海老名市で保管する必要があるのか疑問に感じている。

と、CCC担当は、武雄市と同様、雑誌は販売のみに切り替え、アーカイブとしての機能も放棄することを主張します。
雑誌をこの様に扱う事は、「ブック&カフェビジネス」にとっては生命線と言っても良いことだと思われます。
気軽に手に取れて短時間で読める販売用の雑誌を、カフェの代金を席料代わりにして読ませる…私が観察した限り、代官山に行っても、梅田に行っても、武雄に行っても、この状況は同じでした。
その様に考えれば、雑誌を借りて帰って、自宅でもどこでも、利用者の空き時間で読むことができる図書館の機能は、CCCのビジネスにとっては邪魔になるものだと思います。
これに対して、TRCの谷一会長は、

TRC谷一会長)図書館の価値はアーカイブ機能にあるので、図書館の購読雑誌を減らすのは反対。

と発言します。当然の主張だと思います。これに対するCCC担当の発言は

CCC担当)どのタイトルを残すかは協議させてほしいが、基本的に雑誌は販売を中心にする。販売のタイトル数を大幅に増やすので、館内閲覧できるタイトル数としては大幅増となる。

と平行線です。館内(のワンドリンク制の席)で利用させたいという主張を繰り返します。このために、図書館の アーカイブ機能を放棄[http://lomax.cocolog-nifty.com/apprentice/2013/11/1-0055.html] し、お金を使えない利用者から、雑誌をとりあげようとする訳です。

記事には「コミュニケーションが成り立たなかった」とありますが、思えばこの段階から、両者の溝は深まる一方だったのかも知れません。

今回の関係解消は、今後の全国への「ツタヤ館」の展開についても、大きい影響を与えるでしょう。
海老名市ツタヤ図書館を見る(下)[http://www.kanaloco.jp/article/129841] に書かれた「攻防」の内容を見ても、今回の発表の方法や発言内容を見ても、今回の「解消」が円満解消で無いことは明らかです。TRCとしては、短期的に損失が出たとしても、自社の理念や長期的な事業を考えて覚悟の関係解消をしたものだと思います。
となると、他の指定管理事業については、TRCとCCCは競争相手となる訳で、一方、CCCはこれだけ不祥事を起こした後に、単独で利用者や自治体の信用を獲得しなければならない…
これは、CCCとしては非常に厳しい状況になるのではないかと想像しています。

全国への展開や、今後の海老名の対応も油断せずに見て行かなければなりませんが、今回の一連の事件を通じて、図書館の役割や機能が、より広く深く理解されていくことを期待したいと思います。

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2015年10月30日(金)<< 前の日記 | 次の日記 >>
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■1 シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(33) - 海老名市ツタヤ館運営の行方[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151026S1][図書館][武雄市][CCC][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

海老名市立図書館の指定管理者による運営等についてのご説明10月26日付 文化通信「TRC、CCCとの関係解消へ」[https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20151026S1] の記事でお伝えしました通り、CCC・TRC共同での「ツタヤ館」事業。TRC側が「図書館運営に対する理念の違いで」解消を申し入れたとのことです。 文化通信でトップが語るという形での発表からも、その前の、2015年10月25日の神奈川新聞記事。 海老名市「ツタヤ図書館」を見る(下)[http://www.kanaloco.jp/article/129841] での谷一会長からのコメントからも、これは、袂を分かつ宣言であって、これだけはっきりと決別宣言をやっておいて、今後他の自治体で、「やっぱり手を組んでやっていきます」というのは、ちょっと考えにくいだろうと思われます。
ただ、海老名市立図書館の運営については、文化通信記事で「当面は継続する」とし、共同の記事でも 「神奈川県海老名市の図書館は当面このまま運営を続ける」[http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102601002183.html] という表現になっていた通り、本日の海老名市の発表でも、指定管理期間満了の平成31年3月末まで、海老名に関しては、CCC・TRC共同での運営を続けることに決着した様です。
ハフィントンポスト[http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/27/trc-ccc_n_8397778.html] が報じた通り、

TRCでは現在、図書館を管轄する市教委と「良い方向に向かうよう協議中」としており、市教委は今週中にも会見を開き、今後の図書館運営について説明することになった。 海老名市では市長選と市議選が11月8日に告示され、11月15日に投開票が行われる。本格的な選挙戦に向けて、「TSUTAYA図書館」問題が影響しないよう対応に追われている。

市当局としても、選挙戦を控えたこの状況で、これ以上不透明な状況が続くことは何としても避けたかったのだろうと思います。

海老名市:海老名市立図書館指定管理者の募集についてここで改めて、「CCC・TRC共同事業体」による海老名市立図書館の管理運営がどの様にして行われたかを振り返ってみたいと思います。
海老名市立図書館指定管理者の募集が行われたのは、2013年(平成25年)7月のことです。 この募集は、公募として行われ、9月13日に応募締切。 指定管理者選定委員会において、書類審査及び面接(プレゼンテーション)を行った上で、指定管理者の候補者を選定することとされていました。
募集要項[https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/Web%E5%85%AC%E9%96%8B/%5B%E6%B5%B7%E8%80%81%E5%90%8D%E5%B8%82%5D%20%E6%B5%B7%E8%80%81%E5%90%8D%E5%B8%82%E7%AB%8B%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E6%8C%87%E5%AE%9A%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%80%85%E3%81%AE%E5%8B%9F%E9%9B%86%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%20H25-07-30%20%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85.pdf] によれば、

(7)管理運営業務を担当する事業者が、 プライバシーマーク使用許諾又はそれに類する個人情報保護に関する資格を所持していること。
(8)管理運営業務を担当する事業者が、本件と類似施設の管理運営実績を有している こと。
(9)設計業務を担当する事業者が、 海老名市の入札参加資格(建築設計)登録を有していること。
(10)設計業務を担当する事業者が、本件と類似施設の設計実績を有している こと。

<留意事項>
・共同企業体の形態をとる場合は、構成団体全てが上記に掲げる事項を満たしていることが応募条件です。
・共同企業体で応募した団体は、単独で応募すること及び他の事業体の構成員となることはできません。

が応募資格とされ、「CCC・TRC共同事業体」が管理運営業務を担当し、代官山プロジェクトに参加した「株式会社アール・アイ・エー」が設計業務を担当する候補者のみが応募 *1 し、プロポーザルの結果、候補者として選定され、 平成26年3月27日に協定を結んだという経緯になっています。

海老名市図書館指定管理業務 事業計画書(CCC・TRC共同事業体) 「CCC・TRC共同事業体」が提出した、事業計画書を見てみます。
事業計画書は計76ページ。ページ右下隅に「Copyright(C) 2013 TRC,Inc. All Rights Reserved」と入っています。内容を見ても、TRC指定管理館の業務の紹介が大部分で、CCC独自の「ライフスタイル分類」についても、画像の通り、その内容には全く触れていません。また、この事業計画書通りに運営がされていれば、一連の様々な問題は生じることは無かったでしょう。
CCCの名義が見えるのは、事業計画書で別添とされた、5ページの完成予想パース。こちらには「CCC Co.,Ltd. All Rights Reserved.」の表記があります。
この内容から見るに、指定管理業務に関してはほぼ全面的にTRCが作成した事業計画を提出し、プロポーザルを経て、指定管理者として指定を受けたと言えると思います。

事業計画書がこの様にして作成されたことを踏まえますと、中央館の運営をCCCが全面的に行っていて、TRC側から 「CCCの独自の図書分類は司書が本を探すのも非常に困難。図書館のあり方として、考え方に折り合いがつかなかった。」[http://www.asahi.com/articles/ASHBW3GRDHBWUCLV002.html] という発言が出る状況にあることは、事業計画書で説明した様な運営をできていないということだと思います。

今後の中央館の運営に関しては、事業計画書で説明された様な運営が実現できる様、市当局としても適正な事業評価を行い、必要があれば是正勧告を通じて解決を要求する様にして頂きたいと思います。それが、市民の図書館を取り戻すために行政がなすべき仕事だと思います。

*1: 応募の意向を示した事業者は他にもありましたが、スケジュール上、申請までに海老名市の入札参加資格を得ることができず、参加を断念した模様です。

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