2013年08月22日(木)この日の詳細

■1 シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(25) - 『図書館界』65巻2号 第54回研究大会全体報告 図書館における個人情報/プライバシー情報の取り扱い:情報セキュリティの視点から[http://www.nal-lib.jp/kai/v65/cont2.html][武雄市][図書館][TSUTAYA図書館][ビッグデータ] このエントリーをはてなブックマークに追加

Suica履歴提供の問題が話題になる中、貸出履歴の扱いに関して、 熊谷千葉市長と高木浩光セキュリティー専門家とのビッグデータ取り扱いに関する会話[http://togetter.com/li/550187] の様なやり取りがあり、改めて、 貸出履歴から利用者情報を外しただけでは、個人と結びつく可能性は否定できない という指摘や、 個人の読書履歴を活用する主体は利用者自身であるべき という主張をしておきたいと考えました。
武雄市図書館の読書履歴の扱いの問題とつながる部分もあると思い、シリーズに含めました。

2013年3月の日本図書館研究会研究大会のシンポジウムで、 「図書館における個人情報/プライバシー情報の取り扱い:情報セキュリティの視点から」[http://www.nal-lib.jp/events/taikai/2012/report.html#gaiyou2] と題して、この様な話題をお話させて頂きまして、 『図書館界』65巻2号(通巻371号)July, 2013[http://www.nal-lib.jp/kai/v65/cont2.html] に掲載して頂いた報告について、許諾を頂くことができましたので転載いたします。
なお、図については、発表時に使用したスライドを掲載しております。

はじめに:

図書館におけるプライバシー情報について,情報セキュリティを専門としている利用者の立場から考えてきたことを発表させて頂きました。
今回の発表は,前川氏の「履歴を残す・残さないの,0と1の間を考えていく必要があるのではないか」 *1 という問いかけをきっかけとして,図書館を外から見てきたシステム技術者として考えた部分を軸にして,図書館システムとシステムが扱う情報についてまとめたものです。
発表の場では検討していなかった点について,他の方の研究報告および討議の場で,新たに気づかされた重要な問題がいくつかありました。その点についても,補足させて頂きたいと思います。

「削除」のあいまいさ:

「履歴を残す・残さないの,0と1の間」として,技術者として,まず気になる事が「削除」という言葉のあいまいさです。
これは図書館システムに限らず,広くITシステムに共通することですが,「データを削除する」という仕様を与えられた時に,システムを作る側は「データを削除しても良い」と解釈しがちです。
色々なレベルでの「削除」
データの削除にはリスクが伴います。他の帳票を出力するために必要ではないかとか,集計時に必要となるのではないかとか,何らかの障害が発生した際に必要になるのではないかという点を考慮すると,システムを作る側にとって,削除は簡単な問題ではありません。
例えば「返却時に貸出情報を削除する」という仕様についても,これを本当に厳密に実現することは,設計時から例えば「返却時に利用者と貸出履歴の紐づけは抹消され,システム内に残存しないこと」といった様な仕様を掲げ,アプリケーションだけでなく,データベースやハードウェア,運用まで,この要件を満たす様に設計しなければならないでしょう。
「システム内に残存しない」という要求にもいくつかのレベルがあります。
図書館システムから見えないのか,データベースにも残らないのか,ジャーナルやバックアップにも残らないのか,どのレベルを要求するかで実現の難しさは変わってくると思いますが,ジャーナルやバックアップにも残らないことを保証しようとすれば,障害対応とのバランスの中で,実現の難しさは相当に上がってきます。
例えば,クレジットカードの決済を行うシステムは,決済完了時点で暗証番号やカード裏面に記載された確認用の数字(CVV2)がシステムに保存されないことを保証しなければなりません *2 から,これを実現するために相当の注意を払って設計と実装が行われていますし,使用されるハードウェアにも堅牢さが要求されてきます。当然ながらこれはコストに反映されます。
図書館システムに戻って「返却時に貸出履歴を削除します」ということについて,実際にはどのレベルで削除が行われているのか,必ずしも多くの図書館員の方が明確な答えを持っているとは言えないのではないかと感じます。

他のシステム同様,図書館システムも,
  1. アプリケーション
  2. データベース
  3. ファイルシステム
  4. 物理デバイス

という層でデータを取り扱うことになりますが,アプリケーションのレベルでの削除。つまり,自分が見える画面から見えなくなるから削除されているという認識を持っておられる方が大半なのではないでしょうか。本稿を書くにあたって,実際に公共図書館で「貸出履歴はいつ削除されるのか」「それは,システム上どの様に実現されるのか,内部では統計情報を作るために残っていることはないか」という質問をさせて頂きました。前者については「返却時に削除される」と回答頂くのですが,後者の質問に関しては,その場で明確な回答を頂くことはできませんでした。
新氏の発表や討議を通じて得た情報から考えますと,画面からは参照できなくとも,履歴情報が一定期間保存されている図書館システムも存在するというのが実情の様です。
この場合「返却時に削除します」という説明は,図書館員の方から見える範囲では間違いではないのかも知れませんが,利用者にとっては正確ではないでしょう。
岡崎市の図書館で起きたLibraHack事件を振り返りますと,図書館員の方の図書館システムに対する見方と言いますか,姿勢にもどかしさを感じることが多くありました。
やや極端な表現かも知れませんが,図書館システムの問題はシステムの問題であって図書館の問題では無いと言う様な姿勢です。LibraHack事件は,まさにその様な姿勢を背景にして起きた事件とみることができると思います。
一部の図書館員の方には,図書館システムはベンダーに任せているもので,自らは単なるシステムの利用者という認識があるのかも知れませんが,図書館利用者に対する責任は図書館自らが負うべきものであって,決してベンダー任せにできるものではないと考えます。
2005年の個人情報保護法施行以来,情報システムの中で扱われている個人情報について,個人情報を取り扱う企業自らが責任を負わなければならないという立場で,システムの中での個人情報の扱いを明確化する取り組みが行われてきました。
図書館においても,図書館システムの中でどの様に貸出履歴等の個人に関する情報が扱われているかを図書館員自らが正確に把握し,責任を持って対応できるようにすることが急務だと考えます。

匿名化情報の利用:

図書館では貸出履歴を元にして,多くの統計情報を作成しています。これらの統計情報は利用者個人から切り離されていますが,切り離されたはずの情報が,再び個人と結びつく事がないかという点については,慎重な検討が必要だと考えます。
本人の参考に
例えば「この本を借りた人は,こんな本も借りています」という情報は,ある利用者が借りた本の中に家族や周辺の人に知られたくない本が混じっていた場合,知られたくなかった貸出履歴を推察される可能性があります。確実に特定されることはなくとも「この本を借りるのはあの人くらいだろう。こんな本も借りているのではないか。」等と推察され,それが確からしく見える状況があれば,仮に誤っていたとしても利用者のプライバシーを侵害するのではないでしょうか。
リコメンドのため
この様な関連を,例えばリコメンドとしてWebOPACで提供した場合,長期的に収集した上で分析し,情報の提供側が想定していなかったつながりを導きだされる可能性を考慮しておく必要があります。
いわゆる「ビッグデータ」や「データマイニング」として,大量のデータから,コンピュータの能力を使って関連性を見つけ出す技術が近年は個人でも使える様な状況になっています。これらの手法によれば,長期間にわたって,例えば同じ曜日に来館することが多い,どういう雑誌を借りることが多いと言った特徴を見つけ出して,関連するデータをつなぎ合わせて追跡できる可能性が生じてきます。
利用者の情報を削除したリコメンドデータであっても,この様な関連性に基づいて追跡が行われれば,ある時点で本を借りていた人が特定されると,関連する履歴がその利用者のものであることを特定されることにつながる可能性があります。
「どんな本を読んでいるか言ってみたまえ」
この様に,全てのリコメンドデータを収集し続けて分析することは,今日では非現実的ではありません。回線のコストは十分に安くなり,記憶媒体のコストもハードディスクの場合,この15年間で千分の一まで安くなっています。コンピュータの処理能力も向上する一方です。
数年間にわたって,図書館の全リコメンドデータを収集して分析して,こういった追跡を行うことは個人でも実現できる状況にあります。
ネットへの公開は,全てのデータを収集され,分析されても大丈夫かと言う観点で,プライバシーへの影響を検討されなければならないと考えます。

Library 2.0 とその先へ:

本人による読書履歴の活用
一方で,読書履歴を本人がライフログの一部として蓄積することや,大量の履歴データを活用して新たな本との出会いを得たりするサービスは非常に魅力的ですし,SNSの普及等から,自分の読書履歴の一部を積極的に公開したいという利用者も存在します。
私自身も,図書館で借りた本をブログに記録することがあります。自らが読んだ本を後で探し出すことができたり,本に関連したブログ記事を書いたりする際に大いに役立っていますし,本を媒体にしたコミュニケーションは,新しい本や人や世界との出会いを生むでしょう。
そこで図書館がこれらのサービスを提供する事について検討してみたいと思います。
希望者だけに提供するサービスであれば,本人の同意を得ている事から,個人情報保護法上の問題はないと考えられます。また,あくまで希望者のみに対する付加サービスと位置づけ,誘導とならない様な配慮があれば,サービスを利用する圧力となる懸念もないと考える事ができるでしょう。
希望者だけ?同意を取る?
しかしながら,希望者のみを対象としても,図書館が読書履歴を蓄積するサービスを提供する事は,他の利用者あるいは他の図書館の利用者に対して,希望の有無に関わらず過去の履歴を保存しているのではないかという懸念を招く不安が残ります。
読書履歴の扱いに不安を生むようなサービスであれば,それが一部の人に便利に利用されるとしても,公共図書館としては受け入れがたいサービスだと思います。
「活用 vs 読書の秘密」?
一方で,前述した様に読書履歴の活用によって大きく広がる世界があります。ですがここで,「自分は知られても構わない」とか,「説明して同意を得ているのだから構わない」という論で物事を進めてしまえば,利用者のためのはずのサービス提供が,図書館の信頼を損なうという本末転倒な状況を生じることになります。
ここで,二項対立としてしまうのではなく,読書履歴は利用者のものだという原点に立ち返って,図書館としては,まず利用者が貸出中の資料の情報を取得する手段を提供する事に専念して,そこから先のサービスの利用は利用者に任せるという枠組みが構築できないでしょうか。
読書履歴のアプリ連携
WebOPACにログインすれば貸出中の図書名が表示される *3 ,あるいは,予約完了した図書名が登録したメールアドレスに送られてくるという仕組みを提供している図書館は既にあります。
これを発展させて,貸出中の資料の書誌を,図書館の間で統一されコンピュータで処理しやすいフォーマット *4 で提供し,Twitter等に見られる様に利用者が希望する外部の利用者が希望するアプリケーションから取得できる仕組みを提供すれば,利用者は自由に外部のサービスを選択し,あるいは自作して,自らの読書履歴を利用したサービスを受ける事ができる様になると思います。
図書館のアプリ連携イメージ
例えば,利用者は自分が利用したいWeb本棚サービスにログインし,図書館を選択して「貸出中の図書の取り込み」ボタンを押すと,図書館の画面に転送され,そこでWebOPACの認証をすると,貸出中の図書の一覧が表示され,Web本棚サービスに登録したい資料にチェックを付けて,「送信」ボタンを押せば,Web本棚サービスにチェックを付けた資料の一覧が送信されるといった仕組みが実現できます。
Web本棚サービスでは,書誌情報をOpenURL経由で取得するなどして,Web本棚に貸出中の書籍を取り込むことができます。
もちろん,利用者が選択したサービスについては,自動的に処理を行えるようにすることもできるでしょうし,利用を止めたくなったら,図書館側で特定のサービスからのアクセスを停止するような機能を持たせることもできるでしょう。
アプリ連携によるメリット
この様に,図書館と読書履歴を利用したサービスを分離することには以下の様なメリットがあります。

個人情報とサービスの分離
図書館は貸出を管理するために利用者と個人を結びつける必要がありますが,外部サービスには必ずしもその必要がありません。アプリケーション連携をする際に,利用者IDや個人名等の情報を図書館から提供する必要もありません。利用者は匿名で外部のサービスを利用することができます。また,あくまで今現在,貸出中の資料の情報を渡すという仕組みになっていますから,図書館自身が履歴を蓄積しているとの懸念を招きません。
サービス選択の自由
利用者はサービスを自由に選ぶ事ができ,複数のサービスを同時に使う事も,目的に応じて使い分ける事もできます。例えば,全ての読書履歴をライフログとして自分だけが見られる様に記録し,周囲に知らせたい読書履歴をSNSで共有し,特定のテーマの本を公開された仮想本棚に並べて,ネット上の知人と意見交換をするといった利用が可能になるでしょう。また,サービスの使用をやめることも利用している図書館とは関係なく自由にできます。
図書館をまたいだ利用
利用者は複数の図書館を利用しますし, 転居等で利用する図書館が変わる場合があります,図書館に依存しない外部のサービスであれば,各図書館での読書履歴を集約することも継続して管理することもできます。
リコメンドサービスの提供しやすさ
多数の読書履歴から,関連性のあるものを抽出してリコメンドを行う様なサービスを提供する場合,リコメンドから貸出履歴を推察される懸念があります。対象の地域が狭く,人数が少ない場合ほど特定される危険性は高まりますが,外部サービスの場合は,一般的にサービス提供者が地理的に広く,また多くの利用者の履歴を扱う事によって,対象者が多くなることから推察のリスクを下げつつ,より多くの履歴を使って有益な情報を提供できる様になるでしょう。
匿名(仮名)でのつながりの提供
同じ読書傾向を持つ人を紹介する様なサービスを提供する事は,図書館自身が行う場合は個人情報の取扱いの兼ね合いから,困難な部分もあると考えます。希望者だけが匿名(仮名)で参加する様なサービスであれば,似た読書傾向を持つ人を見つけたり,関心のある分野の本を本棚に並べている人を「フォロー」して,その人が読んだ本を案内してもらったりというサービスの展開も可能となるでしょう。

発表まとめ
この様に考えると,図書館自身が各々これらのサービスを利用者に提供することよりも,共通した枠組みを作り,サービスの発展を促し,あるいはこの様なサービスの構築に参加していくようなアプローチが,利用者にとって,より魅力的な環境を生み出すのではないかと考えますし,大いに期待します。

他の方の発表と討議を受けて:

ここまで私自身の発表をまとめてきましたが,シンポジウムでの他の方の発表と討議を受けて,新たに知ったことと考えてことについてまとめておきたいと思います。
新氏の読書履歴が参照できる機能を標準で持った図書館システムがあるとの発表について。私も驚きましたし,恐らく多くの図書館員の方も驚かれたことと思いますが,その後の討議で,この様なシステムは決して例外的な存在ではなく,館種によっては問題とならないケースもあり,カスタマイズによってその様な画面を削除しているケースがあるということを知りました。
しかしながら,貸出履歴が閲覧できる図書館システムが公共図書館に導入されているのではないかと言う問題は,重要な問題提起だったと考えます。
この様な図書館では利用者に「この図書館では貸出履歴は返却後も残りますが,外部には決して漏らしません」という正確な説明をしているのでしょうか。
もし,図書館システムを通じて実際には履歴を見ることができるのにも関わらず,「削除しています」という説明をしている様なことがあれば,これは図書館あるいは図書館員の倫理にも反することですし,個人情報保護法上も問題となる行為です。
まずは図書館員の方が自ら,自館の図書館システムの機能を把握して,利用者に正しい説明を行える知識を持つことが必要だと思います。
履歴が残される場合,改修を行う対策もあると思いますが,すぐに改修を行えない場合,これは「寝た子を起こす」という様な不安もあって大変な判断ではあると思うのですが,何らかの形で利用者にその事実を伝えるべきであると思います。
ある程度,図書館に詳しい利用者は「宣言」を図書館に期待していますし「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」で示された「貸出記録は,資料が返却されたらできるだけすみやかに消去しなければならない」という基準が守られるのが普通だと認識しているでしょう。「基準」の存在は知らなくとも「読書履歴は返却と同時に削除される」と理解している利用者はおおいはずです。
示し方には色々な方法があると思います。例えば,矢祭もったいない図書館では,

Q. 自分が以前借りた図書を調べることはできますか? 調べることができます。詳しくはカウンター,電話,メールにてお問い合わせ下さい。

として,利用者の希望があれば読書履歴を調べることができることを示しています *5
閲覧履歴が取得できるにも関わらず,利用者からの「以前に借りた本を確認したい」「この本は借りたことがあるでしょうか」といった問い合わせに「削除しているので調べることはできません」と答えることは決して許されないと考えます。
いずれにしても,閲覧履歴がシステムから参照できる図書館については,システム上,見えなくなっている図書館と比較して,図書館員が利用者の秘密を守る上でより重い責任を負っていることを自覚して頂きたいと思います。
討議の場で,捜査関係事項照会についての調査結果を発表頂きました。正確な数字などは記録に譲りますが,利用者の立場からすると意外に感じる程度に多い数字だったと思います。
閲覧履歴が残るシステムを使用している図書館において,捜査関係事項照会を受けた場合,どの様に対応するのかということは,しっかり考えておく必要があると思います。
データベースのジャーナルの問題についても,整理をしておきたいと思います。
ジャーナルファイルは,システムに障害が生じた場合に,過去の任意の時点にデータベースの状態を巻き戻すことができる様に記録されるファイルです。
これは,様々な事故や障害に備えて作成されるものですが,その性質上,このファイルを入手すれば,過去の任意の時点での貸出状況を抽出することができることになります。
そういった意味では,ジャーナルファイルは全利用者の全ての貸出履歴が記録されたファイルであると見ることができます。
このジャーナルファイルが,利用者の秘密に対して与える問題を整理してみたいと思います。
図書館あるいは図書館員が自発的にジャーナルファイルを取り出して,利用者の秘密に介入するという問題については,そもそも図書館や図書館員が秘密を守るとの信用が成り立たなければ,図書館を利用することはできませんから,とりあえず議論の外におきたいと思います。
考慮しなければならない問題として,

  1. システムを管理する業者がジャーナルファイルを何らかの理由で外部に持ち出す
  2. 警察の捜査等によって,ジャーナルファイルの提出を求められる

といったものが考えられると思います。
LibraHack事件では,ジャーナルファイルではありませんが,保守業者が利用者データを含んだファイルを社内に持ち帰り,他のシステムの開発に混在させたことが情報漏洩事件のきっかけになっています。
近年のIT技術を基にした捜査技術の進展で,ジャーナルファイルを基にした捜査も考慮する必要が出てきているでしょう。
こういった場合に,ジャーナルファイルが,「図書館の全ての利用者の秘密を含んだファイルである」という認識を持って,対応することが求められることになると思います。

まとめ:

以上,図書館を専門としない立場ながら,図書館システムとそこで扱われるプライバシー情報について考えてきたことをまとめさせて頂きました。ともすれば現場の考慮を欠いた,利用者としてこうあって欲しいという思いに傾きがちだった部分はあるかと思いますが,今回のシンポジウムを通じて,私としても図書館内の実情や事情を知ることができ,さらに深く,図書館とシステムについて考える機会を得られましたことに感謝いたします。

*1: 2012年10月,全国図書館大会第7分科会(図書館の自由)「図書館利用者のプライバシー:ネットワーク時代に関する論点整理」, 前川敦子
*2: Payment Card Industry データセキュリティ基準 Version 2.0, 要件3.2 「承認後に認証データを保存しない」
*3: 川崎市立図書館では、CSVファイルでのダウンロード機能を提供しています。
*4: OpenURL受信機能を備え,JSON, XML等の機械可読な形式で書誌情報を提供するなど。
*5: 「自分が以前借りた図書を調べることはできますか?」でWeb検索をすると、多くの図書館では「返却時に消去しているので調べることはできない」との回答を示していることが分かります。

詳細はこの日の詳細から

2013年08月25日()この日の詳細

■1開示文書にみる「F&B良品」と適法性への疑問 #FB良品[武雄市][FB良品][たけお問題] このエントリーをはてなブックマークに追加

今回とっても長文なので、先に結論を。
「自治体がやってるんだから、法的にはちゃんとしているだろう」という既成概念を打ち壊すのが樋渡市政です。このままでは、自治体の信用や信頼が毀損されていきます。
このことは、F&B良品に限らず、 図書館関係の問題[http://togetter.com/li/540858] に関しても、 開示請求の対応[http://togetter.com/li/404366] に関しても、いわゆる 「たけお問題」[https://sites.google.com/site/takeoproblem/] に、一貫して存在している問題だと感じます。 行政が法を逸脱する時、私たちにはなにができるでしょうか。そして、F&B良品に見る通り、これは武雄市だけでなく、全国の自治体に波及しつつある問題 なのです。

「F&B良品」通信販売事業を行っているのは自治体ではありません:

「F&B良品」の運営の仕組みについて、最近になって 様々な方の情報公開請求の成果[https://sites.google.com/site/takeoproblem/fb-liang-pin/9-ge-zi-zhi-ti-zi-liao-deng] で、ずいぶん明らかになってきました。
武雄市の公式発表によれば、
12月14日(水)、武雄市では 関係自治体と協力企業からなる「F&B良品」ホールディングス 協議会の設立を発表しました。
本日(6/25)、地方の「いいもの」を全国に発信する、 自治体による通販「FB良品」に参加する全国の加盟自治体が武雄市図書館メディアホールに一同に会し、「全国FB良品運営協議会総会」が開催されました。
「自治体が協議会を設立」し「自治体による通販」を行っているというのです。 この説明からすると、多くの方は以下の図の様な仕組みを想像するでしょう。
自治体が運営するとするスキーム(誤り)

ところがこの理解は全くの誤りで、実際は以下の様な仕組みの事業だということが明らかになってきました。
随意契約の隠れみのとして、協議会と称する組織を用いたFB良品事業のスキーム

つまり、
  • 「F&B良品」ホールディングス協議会と称する団体は、自治体の事務を共同して行う様な協議会ではなく、法に基づかない「協議会」と称する任意団体である。
  • 実際に通信販売事業を行っているのは、各自治体が随意契約した「FB良品企業連合」という組織である。
ということです。

「自治体が運営する」という優良誤認:

FB良品[http://fb-ryohin.jp/] のページには、 「自治体運営型 通信販売サービス」です。との記述があります。

確かに、「自治体が運営する」とは書いていない訳ですが、 多くの方が「FB良品は自治体が運営する通信販売サービスだ」との誤解をしている のではないでしょうか。
これは一般消費者だけではなく、メディアでも同様で、ちょっと検索しただけでも、こういった事実を誤認して書かれた、以下の様な記事が見つかります。

この様な、誤解に基づく記事が書かれるのは、何より冒頭に書いたように、誤解を与える様な発表をしていることに原因があるのではないでしょうか。
「自治体が行っている通信販売だから安心だ」という、 優良誤認[http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/yuryo.html] を招くような発表を、自治体が行うことには問題がある と言わざるを得ません。

協議会の設置について:

地方自治法には、協議会の設置に関する定めがあります。
第二百五十二条の二  普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、 協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができる
2  普通地方公共団体は、 協議会を設けたときは、その旨及び規約を告示するとともに、都道府県の加入するものにあつては総務大臣、その他のものにあつては都道府県知事に届け出なければならない
3  第一項の協議については、関係普通地方公共団体の 議会の議決を経なければならない。ただし、普通地方公共団体の事務の管理及び執行について 連絡調整を図るため普通地方公共団体の協議会を設ける場合は、この限りでない
つまり、地方自治法上の協議会を設立するためには、
  • 協議会を設けたことと規約を告示する
  • 都道府県知事に届け出る
  • (連絡調整を図る以外のことをする協議会は)議会の議決を経る
ことが必要です。
「F&B良品」ホールディングス協議会の設立において、この様な手続きは一切行われていません。したがって、この協議会は 「法に基づかない任意団体」であり、「事務の一部を共同して管理し及び執行する団体」ではない のです。
「事務の一部を共同して管理し及び執行する団体」ではない以上、 「F&B良品」ホールディングス協議会と称する任意団体は、F&B良品事業を運営する主体ではあり得ません。

F&B良品参加自治体による不明朗な契約:

上記の様な事情から、参加自治体は各々で「F&B良品ホールディングス企業連合」なる団体と契約を結び、F&B良品事業を展開するという構図になっています。
この、F&B良品ホールディングス企業連合と結ばれた契約については、その一部が 情報公開請求[https://sites.google.com/site/takeoproblem/fb-liang-pin/9-ge-zi-zhi-ti-zi-liao-deng] によって明らかになっています。
一覧としてまとめてみますと、 と、ここにある、 多可町・大刀洗町・石垣市・薩摩川内市・関市・陸前高田市の6自治体で約2千3百万円。一自治体当たり単純な割り算で、約380万円の契約 が結ばれていることが分かります。

これらの契約について、入札などの手続きは行われたのでしょうか。
第二百三十四条  売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2  前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
と定めており、 地方自治法施行令[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22SE016.html] では、 随意契約によることができる場合[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22SE016.html#1000000000000000000000000000000000000000000000016700200000000000000000000000000] が定めてありますが、政令指定都市を除く市町村においては、工事又は製造の請負として百三十万円を超える契約は、 第百六十七条の二[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22SE016.html#1000000000000000000000000000000000000000000000016700200000000000000000000000000] の第三項以下のいずれかの場合に限定されています。
上記に一覧した自治体は、競争入札によってこれらの契約を結んだのでしょうか。
仮に、「F&B良品」ホールディングス協議会が、地方自治法に基づく協議会であるならば、この協議会の決定を理由に、随意契約を結ぶということはあるのかも知れませんが、 前述したとおり、 「F&B良品」ホールディングス協議会は単なる任意団体であって、この会の存在は随意契約を結ぶ理由とはなりません
果たして上記の契約は、
六  競争入札に付することが不利と認められるとき。
七  時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
その他の、 随意契約によることができる場合[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22SE016.html#1000000000000000000000000000000000000000000000016700200000000000000000000000000] にあてはまるでしょうか。加盟自治体の住民であれば、 住民監査請求を行ってみたい案件 です。

「F&B良品ホールディングス企業連合」とは?:

「F&B良品ホールディングス企業連合」とは、どの様な組織なのでしょうか。 先ほどの契約文書には、以下の様な記載があります。
ここに記された「F&Bホールディングス企業連合 代表構成員 株式会社SIIIS 代表取締役 杉山隆志」氏は、Twitter上での発言で、
  • 武雄市との間に協定を結んでいる
  • このような協定は自治体との契約の場合は一般的であり、契約先の自治体に提示している
としています。 この「協定」の内容が、最近になって情報公開請求を通じて明らかになりました。
この様な協定は、自治体発注の工事をいわゆるJVで受注する際に結ばれるもので、前述の杉山氏の発言によれば、この協定を契約する自治体に示して、契約を行ったということの様です。
ところで、この協定書には以下の様な条項が入っています。
H24-03-09 FaceBookページ及びF&B良品ページ構築に係る業務に関する包括的業務委託企業連合協定書, 第5-6条
H24-03-09 FaceBookページ及びF&B良品ページ構築に係る業務に関する包括的業務委託企業連合協定書, 第13-15条
(構成員) 第5条 当企業連合の構成員は,次のとおりとする。
 (1) 名称 武雄市
 (2) 名称 株式会社アラタナ
 (3) 名称 株式会社SIIIS

(構成員の責任) 第6条 構成員は,それぞれの分担業務の進ちょくを図り,受注契約の履行に関し 連帯して責任を負うものとする。

(受託途中における構成員の脱退に対する措置)
第13条 構成員は,発注者及び構成員全員の承認がなければ,当企業連合が本業務を完成する日までは脱退することができない。
2 構成員のうち受託途中において前項の規定により脱退したものがある場合,残された構成員は 共同連帯して当該構成員の分担業務を負うものとし,発注者の指示に従い本業務を完成させるものとする。
3 前項の規定に従い,新たに費用が生じた場合には,脱退したものの負担とする。

(受託途中における構成員の破産又は解散に対する措置)
第14条 構成員のうちいずれかが受託途中において破産又は解散した場合は,残された構成員は 共同連帯して当該構成員の分担業務を負うものとし,発注者の指示に従い本業務を完成させるものとする。
2 前項の場合においては,前条第2項及び第3項の規定を準用する。

(解散後のかし担保責任)
第15条 当企業連合が解散した後においても,成果品につきかしがあったときは,構成員全員が 共同連帯してその責に任ずるものとする。
2 構成員のうち受託途中において第13条又は第14条の規定により脱退したものがある場合,残された構成員が前項による責に任ずる。
つまり、発注者に対して構成員は連帯債務を負うという契約になっており、 構成員である武雄市も連帯債務を負う立場になります。
民間企業が行う事業の債務保証を自治体が行うという構図は、第三セクターの破たんの際に、自治体の隠れ債務として大きな問題になりました。夕張市の財政破たんの大きな原因となったのも、この第三セクターに対する債務・損失保証でした。
この様な債務保証が、議会にも住民にも知らされない形で行われて良いのでしょうか。
地方自治法では、
(債務負担行為)
第二百十四条  歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、 普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない
として、債務負担行為を予算で定めておかなければならないとしています。
予算については、議会に提出されますし市民にも明らかにされるわけですが、 武雄市の予算書にはこの債務負担は示されていませんし、議会でも議論をされていません。 本来であれば、債務負担行為として予算に組まれるべきものが、予算に組まれずに契約され、 他の自治体の契約文書や、F&Bホールディングス企業連合の杉山氏の発言ではじめてその存在が明らかとなった ものです。
そもそも、 自治体が民間企業を含む企業連合の債務保証をするという構造に問題はないのでしょうか
第三セクター破たんの際にも議論されましたが、 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%96%40%90%6c%82%c9%91%ce%82%b7%82%e9%90%ad%95%7b%82%cc%8d%e0%90%ad%89%87%8f%95%82%cc%90%a7%8c%c0%82%c9%8a%d6%82%b7%82%e9%96%40%97%a5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S21HO024&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1] には、以下の様にあります。
第三条   政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。
この法律があるため、第三セクターに対しても自治体は、連帯保証を負担することはできず、債務負担行為として予算化した上で、補償額が限定される損失補償契約として保証を与えてきました。
この法律さえも無視して、自治体が連帯債務を負う協定を結ぶことは果たして適法な行為でしょうか。 また、 この協定に基づいて行われた各自治体の発注は適法なものでしょうか
「F&Bホールディングス企業連合 代表構成員 株式会社SIIIS 代表取締役 杉山隆志」氏の発言によれば、既にこの協定に基づいて、他の自治体との契約がなされているということであり、 武雄市は将来において発生するかも知れない債務を負担し続けなければならない状況 となっています。

まとめ:

まとめてみます。
  1. 「自治体が運営する通信販売サービス」との優良誤認を招くような表現を行うべきではない
  2. 「F&B良品協議会」なる団体は、地方自治法に基づかない単なる任意団体である
  3. 「F&Bホールディングス企業連合」の協定は、地方自治法に照らして適切な手続きで結ばれた契約か
  4. 「F&Bホールディングス企業連合」の協定にある連帯保証は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律に違反しているのではないか
  5. 企業連合が適法に成立したものでないとすれば、その協定に基づいて参加自治体が結んだ契約は適法なものか
冒頭に掲げた様な感想に至りました。
自治体が行う違法・脱法行為については、住民が動かない限り、なかなか是正される機会がないということをつくづく感じます。
そのかわりなのかも知れませんが、 自治体が行う行為に対して「おかしい」と思った住民が問題を糾す方法は選挙以外にも用意されています。情報公開請求(ひとりでできます)がそうですし、住民監査請求(ひとりでできます)や住民訴訟(ひとりでできます)もそうです
もちろん議会の監視が機能していれば、 議会に対する請願や、議員に対する情報提供などの働きかけを通じて、問題を認識してもらう方法もあるでしょう
公共図書館には、こういう時のための本も用意されていて、民主主義の仕組みを知識の面から支えていると考えます。
こういう自治体にこそ、民主主義の砦としての図書館が必要なのでしょうし、民主主義を壊そうと考える為政者は、まず図書館を破壊したがるのかも知れません。
本記事を書くにあたっては、 佐賀県武雄市の問題について:takeoproblem[https://sites.google.com/site/takeoproblem/] から、主に 99:FB良品 開示文書および各自治体資料等[https://sites.google.com/site/takeoproblem/fb-liang-pin/9-ge-zi-zhi-ti-zi-liao-deng] の情報や、 Twitter #FB良品[https://twitter.com/search?q=%23FB%E8%89%AF%E5%93%81&src=typd&mode=realtime] での議論を参考にしました。

詳細はこの日の詳細から

以上、31 日分です。

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Bio:前田勝之(まえだかつゆき)。長崎在住。コンサル、SE、プログラマー、 なんとか株式会社代表、非常勤講師(情報セキュリティ)。 セキュアド、テクニカルエンジニア(SV,NW)。サーバ管理とWeb日記を10年ほど。 ネットとリアルの接点に関心あり。食べること・歌うこと・愛すること・作ること・飲むこと。おいしいものがぜんぶすき。

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