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■1シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(22) - 武雄市図書館について頂いたメールへの返信[武雄市][図書館][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

最近、武雄市図書館に関心を持って、情報を追いかけ始められた方から、メールでご質問を頂きました。
質問の内容は、武雄市図書館の図書館としての問題に関するもので、私が思うところを返信したのですが、武雄市図書館問題に新しく関心を持った方に分かりやすく書いた積りの文章で、他の方にも読んで頂けるのではないかと思い、若干修正して転載しておきます。

武雄市図書館の排架について:

私自身には、図書館での実務経験はありませんので、以下の話は、私自身の図書館の利用体験や、公共図書館について書かれた本を読んだり、図書館に関わる方々とお話しさせて頂いたり、かつての武雄市図書館を利用されていた方、武雄市図書館を訪問された方、見学された司書の方の話などを通じて、私が理解し感じてきたことです。ぜひこれを司書さんですとか、実際に図書館で実務に携わる方にぶつけて意見を聞いて頂きたいと思います。

図書館に行かれた方の体験記で疑問を持ち、実際に知り合いの図書館員の方に足を運んでいただいて確認をして頂いたのですが、武雄市図書館では資料が請求番号順に並んでいない 上に、書架整理も行き届いていない状況にある様です。

本当に基本的なことから申し上げることになって恐縮ですが、図書館の資料というのは、全て、利用者に利用されるために所蔵されているものです。
また、公共図書館は売れ筋の本を置いておけば良いというものでは無く、市民の誰かがいつか必要とする資料を提供する使命を持っています。
必要な本を見つけ出せて利用できるというのは、図書館の基本的な役割を支える機能です。

そのために一般的な公共図書館では、 開架と閉架[http://www.nantoka.com/~kei/diary/?20120720&to=201207201#T201207201] を使い分け、頻繁に書架整理を行って所蔵している資料が利用しやすい状態を保っています。

開架と言うのは、一般に図書館で見る普通の書架で、これは利用者が自由に本を手に取り戻しますから、あるべき場所からずれることが生じます。
一般的な図書館では、図書館員の方は返却のついで等、機会を見つけては書架をチェックしてこの乱れを直しています。

閉架の書架は、集密書庫などを利用して、ぎっちりと密度を上げて、保管庫の様な役割を果たしています。閉架からは、請求に応じて図書館員の方が本を取り出し、また、あるべき場所に戻します。

この「あるべき場所」が定まっているというのが前提で、図書館で借りてきた資料には、まず例外なく背などにラベルが貼ってあって、「021.4フ」等と数字や記号が書いてあると思います。これを請求番号と言います。
一般的な図書館の資料は、この数字の順にきれいに並べてあり、その並びの場所にあることが「あるべき場所」にある状況です。

数十万冊の資料の中で、「あるべき場所」にない資料と言うのは、図書館の中にあることは分かっていても、使うことができない資料になってしまいます。

誰もいないカウンターの開いたパソコン
さて、武雄市図書館ですが、商業スペースを確保するために、バックヤードの作業スペースが削られました。
樋渡氏はオフィスが広くて無駄だったと発言していますが、図書館のバックオフィスは、新しい資料の受け入れの際のブックコートやラベル貼り、本の修理と言った作業がありますし、本を積んだブックトラックを通すために、一般のオフィスより広い作業スペースを必要とします。
そういうスペースを削った結果、カウンターはこういう状況になっています。

さらに閉架書庫を削り、巨大な脚立を持ってこないと届かないような4mもの巨大書架を導入することになり、子ども向けの絵本は大人でも手が届かない場所に飾られる様になりました。

巨大な脚立大人でも届かない絵本

開館時の資料の運び込みは、市民ボランティアを募って行っていました。このボランティアが、市民の図書館を作ろうという、市民から出てきた自発的な活動の結果であるのならば、このこと自体は悪いことではないと思います。だからこそ、市がボランティアを募集するという発想には違和感を感じます。ボランティアを募る前提で、改修費の積算に運び込みの費用を積算していなかったのだとすれば、市民の労役をあてにしていることになります。
いずれにせよ、ボランティアの方に依頼するのであればなおのこと、綿密に段取りや排架を検討して、図書館での排架作業の経験が無いボランティアの方に協力してもらって、きちんと排架する体制を作らなければなかったと思います。
本を配架ではなく、排架する意味。あるべき場所に本を戻すことの意味。そういったことを通じて、図書館の役割や機能を理解してもらう良い機会になるはずだったと思います。

背表紙が見えない並べ方インターネットの所にある多久市史

この写真を見る限り、その様な計画や段取りが行われたのかどうか、疑問に感じられます。せっかくのボランティアの方の好意を踏みにじる様な、ただ作業に使っただけと言う状況が無かったかと心配になります。

以前の武雄市図書館 - 子ども向けコーナーこういうことは、図書館運営経験がある事業者であれば起きないはずの話なのです。
旧図書館ではきれいに排架(図書館の棚に本を並べること、排架と書きます)もできていましたし、子どもの手が届くところに本を並べることもできていました。
旧図書館の棚をあたれば、どの高さの本がどれだけあって、棚をどれだけ確保すれば良いかはちゃんと分かったはずです。
以前の武雄市図書館 - キャットウォークから新しい図書館の開館時には、まだ手元に無い本を含めて、どれだけの棚を確保すれば良いかを検討して「排架計画」を立てます。
その高さで棚板を調節して、請求番号順に本がきれいに収まるようにした上で、本を運び込んで並べるのです。
それでも、出来上がって年数が経過した図書館では、その当時には想定していなかった程度に蔵書が増えたり、あるジャンルの本が想定より増えたりして、排架に無理が生じてきますが、蔵書整理のための休館日を利用して棚を組み替えたりと言った大掛かりな書架整理を行って対応していると言うのが実情です。

棚から無くなった本はお客さんが買って行った本で、減った分だけ在庫を表に出せばよいという書店と、利用者が返却した本は間違いなく元の場所に戻さないといけない図書館とは、扱っているものが本と言う共通点がありますが、オペレーションが決定的に違うのです。
武雄市図書館を企画したCCCは、こういう図書館の基本的な機能を蔑ろにしたか、あるいは図書館の実務が分かっていないままに設計したと言わざるを得ないと考えています。

長文になりましたが、まだまだ図書館の問題のごく一部しか書けていないような感触です。
ぜひ、上記の写真や状況を、実際に実務にあたられている方に見て感想を聞いて頂きたいと思います。

書架の高さの問題に関してはこのあたり
武雄市の新図書館では高さ3.9〜4.6m、12〜13段の巨大な書架が使われるとのことです
[http://goldenhige.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/39m46m1213-1990.html]
訪問記の中で、実名を出されている方が書かれて良くまとまっていると思うもの
#武雄市図書館訪問記 #takeolibrary #たけお問題
[http://togetter.com/li/490979]
大量の訪問体験記がこのあたりにまとまっています
佐賀県武雄市の問題について:takeoproblem 09:新図書館への感想など
[https://sites.google.com/site/takeoproblem/library/06-xin-tu-shu-guanno-gou-cheng]

「この図書館が嫌だったら他所の図書館に行きゃあいい」という公共図書館:

最後になりますが、あの大改修の中で見過ごされてしまった問題の中の一つとして、弱者に対する配慮と言う視点から象徴的なものを取り上げておきたいと思います。
ツイッターでのまとめはこちらにあります。
#takeolibrary 武雄市図書館の弱者への配慮についての考察
[http://togetter.com/li/507200]
旧図書館では、2階部分は学習スペース等になっていて、資料を使用する上で、どうしても利用しないといけないという部分では無かったのですが、新図書館では2階部分にも書架が作られ、多くの資料が2階に上げられています。
2階に上がるためには、エレベーターを使用することになるのですが、既存の床を上げる形で改修を行ったために、段差が生じてしまって、車いすでの利用が困難な状況になってしまっています。
車いすでの利用が困難、ベビーカーでの利用が困難、非常時は特に不自由がある方の避難が心配という、弱者への配慮に著しく欠けた施設になってしまいました。

樋渡氏は、5月4日テレビ西日本放送の「CUBE」でのインタビューに答えて、「万人に受けようと思ったら、ものすごいつまんない図書館しか出来ないんですよ。この図書館が嫌だったら他所の図書館に行きゃあいいんですよ」と発言しています。
この批評のために必要部分を切り出して引用しておきます。CM前のキャッチでは発言後の音声が削られていますが、本編のインタビュー部分を注意してみますと、発言の後、インタビュアーが冗談と受け取ったのか笑い声が聞こえます。それに対して、これは、他のシーンの表情と比較すると良く分かるのですが、真顔になって「ほんとに」と付け足しています。「他所の図書館に行きゃあいい」という発言は冗談ではなく、むしろ樋渡氏がこういう図書館を作った真意はここにあるということが、映像から良く分かると思います。

武雄市“TSUTAYA図書館”オープン1ヶ月、福岡にも影響が…, 土曜NEWSファイルCUBE, テレビ西日本, 2013年5月4日放送

公共図書館は万人に受ける必要はなくとも、利用者を切り捨てることは許されることではないと考えます。
困難な状況に直面した時、病気になった時、家族に問題が起きた時、職場や家庭で問題に直面した時。他人に気軽に相談できない問題が起きた時に、はじめて図書館を利用する方も少なくありません。
公共図書館が、お金がある人がハレの日に楽しみに行くための施設としての側面を持つことは否定しませんが、弱い立場の人こそ図書館を必要とすることも忘れないで欲しいと思います。
公共図書館は、書店とは異なった公共的な使命の上に成り立っていて、だからこそ、著作権上特別な扱いが認められているのだと思っています。

現在の武雄市図書館は、そういう意味ではもはや図書館と呼べないものになってしまっていると私は考えていますし、そういう図書館まがいの施設が、税金によって作られて既存の言論を支えてきた図書館と置き換えられることは、読書の自由や言論の自由といった、憲法上の人権をも揺るがすことにつながりかねない危険を帯びていると考えます。

長文になってしまいました。分かりにくい部分がありましたら、ご遠慮なくご指摘ください。
今後のご活躍を祈念いたします。

この記事に頂いたコメント

Re: シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(22) - 武雄市図書館について頂いたメールへの返信 by ナナシ    2015/01/04 21:27
県立図書館の24時間開館を目指す事が如何に馬鹿げているかよく理解できました。

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    Tポイント付きカードの?
    #武雄市図書館訪問記サンダー! #武雄図書館
    2013-06-11 23:25:03 OpenTween
  • RT @senryoAIIT: 「作業を続けていた利用者が、小声ながらも「五月蝿いなっ」と嫌悪感交じりに呟いた声を私は聞き逃しませんでした。」 https://t.co/pzj4egaQC4
    地元の方だと、毎日聞く羽目になっているかも。
    #武雄市図書館訪問記サンダー! #武…
    2013-06-11 23:25:12 OpenTween
以上、1 日分です。

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