2005年02月04日(金)
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昨日の続き。
ご意見[http://www.nantoka.com/~kei/diary/board.cgi?act=read&msgid=156]
を頂きました。
逆なら理解できるのです。自分のコンテンツからリンクを張る時は、リンクを張るということについてある程度の責任を持たなければいけないですし、そのあたりを理解していない人からのクレームも想定されます。
ですが、ここで問題にしているのは、自分のコンテンツへのリンクなのです。
それでも、予防線が必要になるとしたら、それこそリテラシーを上げないと行けないという話になりますし、そのためにはリンクに関する間違った注意書きを減らして行くべきだと思います。
「ネチネチ」という音感が嫌いなんですけれども、ネチケットという言葉があります。
ネットは手段ですから、ネットだからといって一般社会と異なる特別なルールが必要だという意見にはあまり賛成ではなくて、これまでにあるマナーやルールをネットというメディアの特性にあわせていくのが自然だと考えています。一般の人が普通にネットを使うわけですから、歴史的な特殊な慣習というのは寂しいですが自然に淘汰されていくでしょう。逆に、ネットが特別だと思いすぎると、ネット上で違法行為をしたり、人を傷つけたりしてしまうようなことが起こりやすくなると思います。
前置きが長くなりましたが、リンクについて。URLは書籍や論文で言えば、文献の出典表記にあたります。何らかの文献をベースに議論をして、出典を示さないのはアンフェアな行為で、場合によっては盗用です。きちんとした論文では、著者名、出版社、書籍名、版数、ページ数等の情報を文献リストとして付加するのが通例です。
これによって、書かれた論文の読者は、元の文献にあたって、その論文の筆者が恣意的な引用や間違った解釈に基づいた議論をしていないことを確認する事ができますし、読者が同じ分野について調査をしている場合には、参考になる元文献を知る事ができる場合もあります。
この様にして、出典を表記する事は正しい行為だとされてきました。論文を書く人達にとっては、マナー以上のルールと言っても良いでしょう。
出典として表記される側にとっても、出典を正確に表記するルールは、恣意的な引用や間違った解釈に基づいた議論を抑制する担保になりますし、より多くの読者に紹介されるという利点もあります。
これをWebに置き換えてみると実は同じ事なのです。Webに公開した時点で、世界中に公開しているわけで、これは無償の書籍を発刊しているのと同じ様な状況になります。もし、世界中に公開するのが嫌だったら、技術的に手当もできます。パスワードを付ける事もできますし、そもそも公開しないという手段もあります。だとすると、リンクについてどうこう言うのは非常に不思議なことになります。
もう一つ、Webの大発明を忘れてはいけません。「文献リスト」を読者が自由に参照できるという仕組みこそが、Webの大発明の一つだと思います。Web以前にもインターネットを使って情報を得る仕組みがありました。
Archie[http://www.iij.ad.jp/public/archie-main.html]
や
Gopher[http://e-words.jp/w/Gopher.html]
がそれです。ArchieはFTPに置かれたファイルをファイル名から探し出すものですから、一般的な情報検索には使えませんでした。ファイル名を知っていないと目的のファイルを得る事ができなかったのです。Gopherは、階層構造のメニューを辿って、必要な情報を探し出す仕組みでした。様々な情報を得る事ができましたが、どこに何があるということを知っていないと、必要な情報にたどり着く事ができませんでした。
そしてWebの発明が世界を一変させます。誰かが必要な情報を見つけ出したら、そこにリンクした文献リストを作って公開する事ができるのです。自分の知りたい事が書いてあるページを一つ見つければ、そこからリンクを辿って、関連する情報を簡単に得る事ができる。これは画期的でした。
「トップページにしかリンクを張ってはいけない」というルールに従うと、Gopherに逆戻りです。どのサイトのどこにどういう情報があるということを知っている人しか必要な情報を得る事はできなくなりますし、それを見つけ出した成果も他の人と共有する事はできません。これは社会全体の知的生産性を極度に低下させます。
検索エンジンはそのサイトが掲げた、「リンクのルール」の文章には従っていません深い階層のリンクも自動的に抽出して検索対象にしています。これを禁止することもできますが、少なくとも自治体に限っては「リンクはトップページのみ」と主張するサイトでも、実際にロボットによる収集を禁止している例は少ない様です。
もちろん、ロボットでの収集も禁止しているサイトの情報は検索エンジンでも検索できなくなります。
ところで、リンクに制限を設けるという風習は、アメリカでは非常に少ないと言われています。
もし、日本が本当に「リンクに制限を設ける」という道を進むと、事実上Webは使い物にならなくなってしまうのです。「リンクに制限を設ける」という間違ったルールの拡大再生産を止めなければと思います。
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■2
文京区公式ホームページリンク設定届出書[http://www.city.bunkyo.lg.jp/this_site/index.html][無断リンク]<< 前の記事 | 次の記事 >>
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様式作成事務員の行動原理[http://d.hatena.ne.jp/HiromitsuTakagi/20030802#p1]
で読んだ様な話である。
文京区のホームページにリンクする際は、トップページでなければならないし、
・リンク設定者のホームページが、公序良俗に反しないこと、及び個人・団体等を誹謗中傷する掲載内容でないこと。
・個人・団体等に不利益を与えないもの。
の要件を満たさなければならない。この要件を満たしたページでもリンクを設定する際は、
・団体名(または個人氏名)
・住所
・電話
・担当者名
・ホームページのアドレス
・コンテンツの概要
をメールまたは 文京区公式ホームページリンク設定届出書[http://www.city.bunkyo.lg.jp/this_site/rinksinsei.pdf] の郵送で届け出なければならない様だ。
これだけなら面倒くさいで済むのだけれども、 文京区公式ホームページリンク設定届出書[http://www.city.bunkyo.lg.jp/this_site/rinksinsei.pdf] の様式を作った際に、もう一つの様式作成事務員の行動原理が出てしまったらしい。
文京区公式ホームページへのリンク設定届出書 平成 年 月 日 文京区役所企画政策部 広報課長 殿 下記ホームページから、文京区公式ホームページへのリンク設定を行いますので、 届出します。 ただし、当ホームページの内容が、下記要件に反した場合は、直ちに、リンク設 定を解除します。 文京区ホームページへのリンク設定可能なページの要件 (1)公序良俗に反しないこと及び個人・団体等を誹謗中傷する掲載内容ではないこと。 (2)個人・団体等の不利益をあたえる掲載内容ではないこと。
お役所では、「届出」は「申請」と全く異なり、「届け出」られる性質のものであるから、却下されるということはない。それだと例えば困ったページからリンクを張られると困るということで、「届出」を事実上申請にしてしまうワザが駆使してある。
「ただし、当ホームページの内容が、下記要件に反した場合は、直ちに、リンク設定を解除します。」という一文がそれである。これを予め様式に入れておけば、届出を事実上、許可制にしてしまうことができる。
このテクニックは利用価値が高くて、申請にすると却下する場合に理由を示さなければならなくなり、説明抜きで却下ができなくなるので、届出の様式で工夫してしまうというやり方だ
*1
。こうしておけば、都合の悪い届出を様式不備で届出を受理しなければ良い。「届出は受理をもって成立します。」と書いてある。
下の方の「文京区役所使用欄」に注目して頂きたい。
「要件への適合 適合 不適合」のチェックリストがあり、課長・主査・担当者と捺印欄が用意してある。
ということは、いちいち記入されたコンテンツの概要が上記の要件に適合しているかどうかを担当者がチェックして、主査、課長とまわる仕組みの文書になっているということだろう。こういうシステムになっているということは、メールで申請した場合も担当者が書式を起こして、同じルートに乗るのではないかと想像される。
そう。もう一つの様式作成事務員の行動原理はしなくて良い仕事を増やす事である。
様式作成事務員の行動原理[http://d.hatena.ne.jp/HiromitsuTakagi/20030802#p1]
とは矛盾するけれども、こうやって際限なく書類と仕事を増やすのも確かに様式作成事務員の行動原理の様である。
電子自治体が推進されていく中で、そうやって蓄積された様式が、見直しをされることなく淡々と電子化されていく実態がある。紙の上で芸術的な複雑さで引かれた罫線や欄外に並べられた注意書きをWebで再現するために、工数と独自のテクノロジーが注ぎ込まれていく。先に述べた様に、様式は非常に大切なノウハウが詰め込まれたものであるから、Web上でこれまでの様式と同じものを表示しなければ納得しないのである。
通常の企業のIT化は、電子化を機に仕事のやり方を改善する事によって、IT投資を回収している。帳票をそのままにして進めるお役所の電子化やり方では、莫大な予算を使って、紙の消費が減っただけということになりかねない。
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■3引用は許されるか[無断リンク]<< 前の記事
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引用については誤解が多いので触れておく。引用は脱法ではなくて、著作権法で認められた権利である。 著作権法[http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM] では、
(引用)
第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
著作権法は、文化の発展に寄与することを目的として定められた法律で、文化の発展に寄与するためには「引用して利用することができる」必要があったから、法律で定めているのである。この点、引用を禁止するのが難しいから許されているという事情ではない、注意しておきたい。
自分の権利と同様に、法律が認めた他人の権利は尊重しなければならない。
ネットに関するリテラシー教育では、公正な引用についてもう少し掘り下げると良いのではないかと思う。
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