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■1地域iDCの必要性について[地域情報化] このエントリーをはてなブックマークに追加

何か、 JANOG ML をマターリと観察するスレ[http://pc.2ch.net/test/read.cgi/network/1052354767/] とかできていたので、「地域iDCで地域の自立(自律)を」って吼えている背景を書いてみようと思います。

地域iDC必要性のキーワード:

地域iDCの必要性を論じる上で、「地域の自立」という言葉は一つのキーワードではないかと思いますので、予め提示しておきたいと思います。

二つの役割:

地域iDCは、大きく次の二つの立場からの役割を担っている( 平成14年第11回経済財政諮問会議[http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0424shimon-s.pdf] )。
  • 自治体ITサービスのアウトソーシング拠点
  • 地域IT産業の育成および活性化
この内、地域産業育成の観点からは地域に作ることに賛成であるが、自治体ITサービスの拠点として考えると、他県(大手ベンダー)に委託したほうが、良いサービスを安価に受けられるのではないかという意見があるようです。
この文書では、まず前者の立場からも地域iDCの必要性があることを述べ、次に地域IT産業にどのような波及効果を及ぼすかについて述べます。

自治体ITサービスのアウトソーシング拠点:

大手ベンダーによる囲い込み:

大手ベンダーサイドは、市場の成長や裾野の拡大を見越してiDCへの積極投資を行い、早期に優良な利用者の囲い込みに動いています。 こうした状況の中、将来の付加価値サービス提供をにらんだ「早期優良顧客囲い込み」という供給サイドの戦略的要因によって料金単価は下降傾向にあります。 これは、データセンタの契約が自然に長期にわたる契約であるため、
  • いずれ提供コストは低下していく(機材、通信費の低下)
  • データセンターで囲い込めば、周辺サービスを全て囲い込める
  • データセンタを低価格でも契約すれば、周辺サービスで回収が見込める
という戦略で、ホストコンピューターの安値契約を通じて、周辺の機器やアプリケーション市場の独占的な支配を行おうとする戦略と本質的に同じものではないでしょうか。
この様な囲い込みに行政サービスを委ねると、適時・適宜なサービス選択が不自由になり、長期的・総合的な調達コストが増大する可能性があります。

自立性を持った行政サービス:

地域iDCは、地域行政のIT戦略拠点としての役割を考える必要があり、広域的な観点での効率化と共に、地域の主体性・独自性をも実現していくという役割が求められています。 これからの自治体サービスは、効率化を推進する一方で、自治体のレゾンデートルとして地域独自のサービスを提供していかなければならない状況にありますが、これは電子自治体にあっても例外ではありません。
従って、地域iDCは多様なサービスを選べる器とする必要があり、選べることを保証することが地域iDCの条件であると考えます。
入札システムについてはA社のパッケージ、パスポート申請システムについてはB社のパッケージを使用するけれども、施設予約システムについては近隣の自治体と満足の行くものを共同開発して使用したいといったニーズに答えられる器となるべきであると考えます。
大手ベンダーとしては、「全国的に共通なサービスパッケージを総合的に提供しているので、それさえ採用すれば電子自治体サービスが可能になりますよ」ということをアピールするわけですが、これを全面的に採用しても、他の自治体と横並びのサービスを提供することしかできません。
横並びで良い部分については、コストを計算した上でそういったパッケージを利用するのも選択だと思われますが、全てを特定ベンダーに委ねてしまうのは、まさに自治体の存在意義に関わる問題だと考えられます。
もう一点指摘すれば、地域の独自性があるからこその自治体であって、これはITも例外ではないと考えられます。このことを考慮すると、「全国的に共通なパッケージを提供する」という大手ベンダーの戦略が通用する行政サービス部門はむしろ一部なのかも知れません。
大手ベンダーに任せてしまうことは、電子自治体の自治の部分を失ってしまう危険があることを認識する必要があります。

選択の保証:

安値入札事件に見られる様に、システム構築の段階である部分を極端に安値であっても受注することによって、システムのライフサイクルの様々な部分によって随意契約の機会が得られ、全体として収益が確保できるという構造は既に色々なところで指摘されています( 「情報システムに係る政府調達の見直しについて」ソフトウェア開発・調達プロセス改善協議会[http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002255/] )。
この問題に対応するために本県で考案したような「システム開発地元発注」や、前述の「情報システムに係る政府調達の見直しについて」に見られる様に、システムの各段階を分割して発注し、一部を受注することが他の部分の受注において優位に繋がらないような仕組みが模索されています。
地域iDCのシステムにおいても、サービスの各部分を選択できるような仕組みを保証することが大切であり、それによってシステムライフサイクル全体でのコスト削減やサービスレベルの向上が実現できると考えます。

地域IT産業の育成および活性化:

「IT関連産業は、ほとんどが首都圏、特に東京に集中している。今、地方でも、意欲ある若い人が、ぜひ、こういうことをやりたいと言っている。ただ、それだけの需要が(地方で)ない。ぜひ、この需要を、共同アウトソーシング、電子自治体によって、道を開いていく必要があると。民間企業の方と地方自治体が組んで、こういう業種を起こし、これを発展させていく、活性化させていくというのが狙いである。」( 第11回経済財政諮問会議、片山総務大臣[http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0424shimon-s.pdf] )
という目標が語られていますが、今現在、どの様な状況があるか、今後、地域iDCによってどのような展開が考えられるか述べてみます。

東京一極集中:

現在、事実上、日本の通信トラフィックのほとんどは東京に一極集中しています。これは、歴史的経緯でそうなのですが、地方の立場からするとこれを変えていかなければならないと思います。
災害対策(東京の事故に全国が巻き込まれます)
ケーブル火災を思い出しましょう。
コスト構造
実は地方が東京のインフラ代を払っている構造。地方から線を持っていって、専用線代を払った上に接続料を払わないといけない。地域の情報自治が成り立つ地域網。
運用を任せるとコントロールも委ねることになります。
といったことを切実に感じます。 技術者がいないから(技術がある会社がないから)、東京でひとまとめにやったほうが効率がいいからと言った理由で、東京に任せてしまうと悪循環でますます中央でしかコントロールができなくなってしまうという状況があります。 地域で地域のネットワークを運用していかないと、地域に技術が育ちません。
「地域で地域のインフラをつくっていくということは、技術の畑を耕すということ」( 地域インターネットの危機〜名古屋包囲網[http://www.astf.or.jp/astfinfo/mediaA/pdf/7-suzuki.htm] )と言われますが、開発は運用の周辺に育つ産業ですから、運用を外に出してしまうとIT産業の畑がなくなってしまって、開発という産業も失ってしまいます。
既に中央との差は大きくついていますが、今回のLGWAN構築、地域iDC運用は、地域のIT産業界にとっては非常に大きいチャンスで、ここを中央に任せてしまうと、技術と産業の一極集中構造を変えることができないのではないかという危惧を持っています。

地域発のLGWAN系ベンチャー:

いわゆるワンストップサービスは、何ヶ所も行かないとできなかった手続きが一ヶ所でできる様になるという点で、マイナスがゼロになるサービスと見ることができますが、これをプラスにするような本当の行政サービスの変化は今後起こると考えられます。
より使いやすい電子入札や入札情報の窓口を提供するサービスは既に立ち上がっていますし、例えば海外旅行の予約とパスポート申請を連携、家計管理から電子申告を連携といった様な、官民のサービスを融合したようなビジネスが立ち上がってくることは間違いありません。
また、自治体内向けのサービスにおいても、自治体のニーズを細かに吸い上げた製品を世に出して、急成長する会社が現われてくる可能性があります。
この様に、電子自治体が周辺に与える変化は、新たな産業を創出する可能性が非常に大きいのですが、この舞台となるiDCやそこでのサービスを中央に依存してしまうと、これらの産業が芽生える機会を摘むことになります。

メトロエッジ(地域IX)への成長:

地域iDCは民間向けのデータセンタ機能を併せ持つべきであり、これはキャリアや事業者に対する公平性を保証すれば、地域IXに成長していく可能性があると考えられます。
インターネットのブロードバンド化、P2P化によって、東京一極集中モデルが崩壊しつつあり、未だにバックボーンは世界一高い( インターネットBroadband時代[http://www.iajapan.org/bukai/idc/event/2001/pdf/takahashi.pdf] )状況を考えると、中央に地理的に遠い本県こそ、地域でのトラフィック交換が意味を持つと考えられます。
地域iDCがインターネット向けに提供するサービスと、その周辺サービスは、ほとんどのトラフィックが県内に向くために、地域でのトラフィック交換が有利に働きます。
また、IP電話が普及しつつありますが、これはP2Pモデルであり、少ない遅延時間でのパケット交換を要求します。また地理的に近隣に対してトラフィックが多くなるという特性をもっているため、地域IXによるトラフィック交換の優位性が大きいアプリケーションです。
この様な状況から、地域iDCを核とした地域の情報自治が成り立つネットワークの構築が望まれています。

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Bio:前田勝之(まえだかつゆき)。長崎在住。コンサル、SE、プログラマー、 なんとか株式会社代表、非常勤講師(情報セキュリティ)。 セキュアド、テクニカルエンジニア(SV,NW)。サーバ管理とWeb日記を10年ほど。 ネットとリアルの接点に関心あり。食べること・歌うこと・愛すること・作ること・飲むこと。おいしいものがぜんぶすき。

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