2013年06月27日(木) << 前の日記 | 次の日記 >>
これまでの06月27日 編集

■1 シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(23) - 図書館問題研究会 第60回 全国大会 鹿児島・指宿[http://tmk-taikai2013.jimdo.com/][武雄市][図書館][TSUTAYA図書館] このエントリーをはてなブックマークに追加

私自体はこの大会には、残念ながら参加することができなかったのですが、 武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会[http://takeolib.sblo.jp/] の井上代表が参加されて、 分科会での報告[http://takeolib.sblo.jp/article/69901690.html] をされて来られたそうです。

この大会での報告に関しては、 喪くしたものは・・・図書館児童サービスの視点から[http://blog.livedoor.jp/poplar_green/archives/51850719.html] というブログや、 ツタヤ図書館、こぼれ落ちるものは 鹿児島・指宿で議論[http://www.asahi.com/culture/update/0625/SEB201306240074.html] として、朝日新聞デジタルの記事などで紹介されていますので、ぜひご一読頂きたいと思います。

この報告に関連して、「かごしま文庫の会会報」を抜粋した、『武雄市図書館問題について考えた』と題する記事を頂きましたので、この記事を紹介したいと思います。

この文書はネット上では読めない様ですので、関連記事を許諾を頂いて転載します。

図書館の指定管理者と個人情報とポイントカード:

◎図書館の貸出履歴は個人情報か?
誰が何の本を借りたかというのは、その人個人のプライバシーであり、図書館が他の誰かに知らせる事を絶対にやってはいけない大切な個人情報です。
公務員や同等の仕事をする人には業務上知り得た情報を退職した後も漏らしてはならないという、守秘義務が課せられています。図書館にも当然守秘義務は課せられていますが、日本の図書館では更に「図書館の自由に関する宣言」 *1 で「第3 図書館は利用者の秘密を守る。」と宣言しています。
このような図書館の姿勢により、利用者は自分の秘密は守られるという安心感を持って図書館を利用することができるのです。

◎貴方の全てを公開出来ますか?
『図書館の自由に関する宣言』は日本図書館協会が出したものですが、同じ様な宣言は世界の図書館界にもあります。
その中の『ユネスコ公共図書館宣言』には「蔵書およびサービスは、いかなる種類の思想的、政治的、あるいは宗教的な検閲にも、また商業的な圧力にも屈してはならない。」とあります。
けれど、利用者の図書館利用に関する履歴という個人情報を軽く考え、商業的な圧力に屈しかけている図書館があるのです。
今年の春から新聞やニュースで話題になっている佐賀県の「武雄市図書館」です。
これは、「武雄市図書館」を指定管理にし「代官山蔦屋書店」のような図書館にして、貸出カードも「Tカード」にしますという計画です。指定管理者はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)という企画会社で、TSUTAYAなどでおなじみの「Tカード」で情報を集め、その利用者にライフスタイルを提案する会社です。
どういう事をやるのか具体例を出すと、お店で定期的にヨーグルトを買う人のレシートにヨーグルトの割引券が付いてきたり、よく旅行に行く人にパック旅行の案内がメールで届いたり、必ず買う作家が新刊を出したら発売前に予約出来ますというお知らせが届いたりするのです。
お店側も、そのサービスを求めている人にピンポイントで広告を出せるのですから、効率が良くて売り上げの伸びが期待出来ます。それに、そのお店に来るお客さんだけでなくTカード系列店全部のお店の情報を分析してもらえるので、その地域での売れ筋や同じ様なお店に来る客層などを分析して品揃えなどのアドバイスをもらえ、売れ筋ばかりを揃えることができます。
客にとっても店にとっても便利でハッピーですね。
でも、「Tカード」で集められる情報とはどういうものでしょうか?
「Tカード」で集められるのは、貴方が「Tカード」を使って行ったこと全部です。いつ、どこで、何をしたか(買う、借りるなど)が、貴方が登録した住所・氏名・年齢などと一緒にデータベースとしてCCCに蓄積されるのです。
蓄積された大勢の人の情報を元に分析をし、企画を立てるのがCCCという会社の仕事です。
さて、貴方が差し出す情報は、そのポイントに見合うものですか?
武雄市図書館計画では、当初「Tカード」で集めた情報を元に個人に対して貸出レシートなどに「おすすめ本」を記載する「レコメンド」というサービスを計画していましが、個人情報の問題から様々な論議がなされ、現在では「レコメンド」はやらないことになりました。また、「Tカード」の導入は現在の図書館カードとの選択制に変更になりました。
しかし今度は、図書館を利用すると「Tカード」利用者にはポイントが付き、今までの貸出カードでは何も付かないという不公平が生まれました。

◎図書館はプライス・レス
そもそも、図書館を利用したら「Tポイント」が付くことに問題は無いのでしょうか?
「Tポイント」は「Tカード」の系列店でお金と同等に使えるものです。
武雄市市長は「1冊1ポイント程度でたいしたことはない」 *2 と言っていましたが、10冊借りれば10ポイント=10円です。小学生なら目の色を変える金額です。読まなくたって図書館から本を運び出しさえすれば、ファミマでお菓子を買うことが出来るのです。
それから先に書いたように、ポイントがもらえる利用者ともらえない利用者という不公平が生まれます。ポイントの原資は指定管理者側にあるとされていますが、原資がどこであろうとお金をかけて行われるサービスなのです。公共図書館で利用者に「ポイントを付ける」ことと「個人情報」を天秤にかけさせるようなサービスを行うのは、公共施設としてもおかしなことだし、『図書館の自由に関する宣言』からも外れる行為になります。
武雄市図書館計画では、他にも利用者に金銭的負担を促すサービスを始めます。
「雑誌を充実させる」という理由で「雑誌の貸出を止める。持ち帰って読みたい利用者のために、雑誌の販売を行う。」というのです *3
雑誌の貸出をしない図書館は幾つもありますからそこまで変なことだとは思いませんが、理由がおかしいし、利用者に積極的に雑誌の購入を勧めるというのは如何なものでしょう?

◎図書館は誰のもの?
武雄市図書館には武雄市MY図書館という電子書籍を貸出すシステムがあるのですが、これは市民から、移動図書館や分館を作って欲しいという要望に応えて、家に居ながらにして本を読めるというコンセプトで始めたものです。しかし、ブックモービルが買える程の予算を使い1年経った現在、貸し出し出来る本は150冊程度で半分以上が市の広報と青空文庫という状況です *4
そもそも、市民が欲しいと言ったのは電子書籍ではないはずです。
武雄市市長は、CCCを指定管理者にして図書館を「代官山蔦屋書店」のようにし、カフェや売店も併設して「Tカード」も導入したら、日本中の「Tカード」利用者がそのまま図書館を利用出来て、観光がてらに図書館を利用してもらったり図書館目当てで観光に来てもらえたりして、もの凄い経済効果があるとしています。
つまり、図書館を観光の目玉にするつもりなのです。
この図書館は、いったい誰のための図書館なんでしょうね。

[2012年7月]

武雄市図書館問題を通して図書館のことを考える:

◎図書館は誰のものか
5月に発表された武雄市図書館計画に対し、7月に『武雄市図書館・歴史資料 館を学習する市民の会』が発足されました。この会は、武雄市図書館計画に異を 唱えるのではなく、図書館そのものについて学び、武雄市図書館計画に対して考 えたこと、提案出来ることがあれば発信して行こうという主旨の会です。
会では、9月の定例議会で検討してもらいたいとして市民の会で作成した『私 たちの図書館計画』等を議長に提出し、議会でプレゼンテーションをさせて下さ いとお願いしました。その内容は指定管理者がCCCである事を前提にしており、 最小限の改築と市民が望んでいる分館の設置を行い予算は6千万円程度で済むと いうものでした。また8月下旬の新聞報道(市の公式報道ではない)で、図書館改 修のため11月から5ヶ月休館すると発表された点も受け、休館が不要であるこ ともアピールしてありました。
結果、市民の会は9月定例議会で1議員と市長から激しく罵倒されました。こ の様子は、Ustreamというネット動画で誰でも視聴する事ができます。
市民不在で性急に進められる図書館計画に、市民が「自分たちの考えも聞いて 欲しい」と真っ当な手続きを踏んで提案した事なのに、計画内容ではなく、提言したという行為をなじられたのです。もちろん、市民の会が議会でプレゼンテーションする機会は訪れませんでした。
9月定例議会は図書館の改修予算を議決する場でもありましたが、改修予算が 発表されたのは一般質問が終了した翌日でした。つまり、予算に対して反対議員 が質問をする機会を与えられないまま、予算が発表され決議を求められたのです。
改修費用は、武雄市側の持ち出し分が4億5千万円、CCCが3億円で、合計7億5千万円。小さな図書館なら新館が建てられるほどの予算です。図書館が5ヶ 月休館することは、9月定例議会で公式発表された形ですが、新聞報道によって 長期休館を始めて知ったという議員もいました。
この9月定例議会で、予算4億5千万円と休館5ヶ月は可決されました。
武雄市図書館の築年数は12年。綺麗で立派でサービス内容も申し分無い図書館です。

◎指定管理の是非
図書館の指定管理者がCCCになることで、武雄市図書館は365日9時〜21時開館になり、かつ経費も削減出来るとうたっています。
計画書では、自動貸出機を設置するので職員の人数は減らすとなっています。開館時間が増える上に人員を削減されるが、民間のノウハウで図書館サービスが向上出来ると言われても、素直に納得できません。
何より、CCCには図書館運営の実績がありません。モデルとしている代官山蔦屋書店も昨年末に開店したばかりの書店です。武雄市図書館計画は、図書館を代官山蔦屋書店のような図書館にする計画です。指定管理者CCCは入札もせずに決定された業者です。

◎図書館とTカード
図書館にTカードを導入する是非を問う中「でも、武雄市の子どもたちは、新 武雄図書館がオープンするのを、今から楽しみにしているそうです。毎日毎日10 冊借りて返して、たくさんポイント貯めようって。」という情報が寄せられました。
ポイント制については、更に『日本文芸家協会』からも「いたずらに青少年の 利欲を刺激して煽る懸念があり、教育的配慮に欠けるのではないか、と特に危惧 する意見が出ています。」との苦言が呈されました。
これとは別に、Tカードは8月に医薬品の購入履歴をも取得しているとして問題になりました。総務省は今月1日より『パーソナルデータの利用・流通に関する研究会』の開催を始めました。これは、個人に関する大量の情報が集積・利用 されることにより、新ビジネスの創出や国民の利便性が上がる反面、個人情報・プライバシー等についての不安が生じているので、双方を両立させる為の検討会です。来年7月を目処に一定のとりまとめを行う予定だそうです。Tカードの在り方を検討されているも同然ですね。

◎貴方にとって図書館とはどういう場所ですか?
私が武雄市図書館問題を最初に知った時、少なくともTカードの導入は阻止し たいと思いました。個人情報が軽んじられることと、子どもにお金と等価のTポイントを与えるという行為がとても危険だと感じたからです。
今でもその考えは変わっていません。ただ、武雄市図書館問題を追うことで自然と「理想の図書館とは如何なるものだろう?」と常に考えるようになりました。
武雄市長は武雄市の行いが全国のロールモデルになることを望み、武雄市への視察を積極的に呼び込んだり各地で講演会などを積極的に行ったりしています。また、武雄市長を指して元阿久根市長の竹原信一氏の様だとする発言をよく目にします。武雄市図書館問題は他県で起こった特殊な事例に見えますが、同じ様なことが自分の足元でいつ起こってもおかしくない状況なのです。だから、図書館を軽んずる計画が出された時、自分の考えをしっかりと発信出来るように有りたいと思っています。

[2012年11月]

武雄市図書館問題での“子ども”と“歴史資料”と“関連団体”の話:

新武雄市図書館に関する改修の為の設計図や図書館利用規約など、なかなか見えてこなかった部分が詳らかになって来ました。

◎利用規約と子ども
武雄市図書館利用規約では、武雄市図書館が新規開館する際に、新規はもとより従来の利用カードを持つ人も登録手続きが必要とあります。その条件が子どもに対する配慮に大きく欠けているのです *5
  • 12歳未満のお子様はお手続きの際に保護者様の同意書が必要です。
  • 必ず、保護者同伴で受付会場までお越しくださいませ。
  • お子様1人でいらっしゃった場合は受付致しかねますので、ご注意ください。
  • カードのお手続きは利用者ご本人様のものに限ります。
  • ご家族やご友人のカードをお持ちいただいても、お手続きはできません。
“保護者同伴でなければ手続きが行えない”事がどれ程酷いか、皆さんにはすぐ理解出来ると思います。
全ての親が、子どもに付き添って図書館に来てくれるわけではありません。親が病気や仕事でとても時間が取れない場合もあるでしょうし、残念ですが、図書館や子どもに対して関心の薄い親もいるのです。そして、そういう親の元にいる子どもにこそ、より図書館を利用してほしいし、そもそも住民全てが気軽に利用できるよう手続き体制を整えるのが公共施設の使命です。
しかしTカードであれば、厳格な住所確認や親の承諾が必要です。つまり、図書館の利用カードに関する手続き方法を、Tカードの基準に合わせてあるのです。
CCC側からも『Tカードでの武雄市図書館利用に関する規約』が発表されました。
“Tカード番号は個人を特定出来る番号ではない”との理由により、CCC等はTカード番号、利用年月日、利用時刻、ポイント数といった利用履歴を図書館から取得することになっています *6
また、Tカードを止めるため退会した場合、これに紐付いていた図書館IDで図書館を利用するためには、T会員に再登録しなくてはならないとあります。
図書館利用カードだけを持ちたいと心変わりするなら、利用カードそのものを一から作り直せということです。
そして、CCC及び図書館は1日以上の予告期間をおけばいつでも本規約の内容を変更することができるとしています。
こんな規約、あなたは信用できますか?
少なくとも、これを公共施設の利用カード規約と思うことはできません。

◎おはなしの部屋と子ども
写真を掲載出来ないので伝わりにくいとは思いますが、新しい“おはなしの部屋”にも問題があります。
子ども達が喜ぶスペースも図書館内に用意しますという言葉で示された図を、私はしばらく“おはなしの部屋”と認識する事が出来ませんでした。
写真に写っていたのは、壁沿いに配置された背の低い書架、その上部はぐるりとガラスの壁になっておりとても明るく開放的。書架の上には電車の模型が配置され、テーブルの上には玩具が数点見える。床の一部は階段状に盛り上がった部分があり、その上で遊んだり室内を楽しそうに走り回る子ども達の姿が見えます。図書館なのに、8人いる子どもの誰ひとりとして本を読んでいません。
最初私は「ああ、子どものエリアってプレイルームの事か(溜息)」ととらえていたのです。ところが、設計図を見ると“読み聞かせコーナー”と書いてあって仰天しました。つまりここが、新しい“おはなしの部屋”ということです。
改修前の“おはなしの部屋”は他の図書館でも良く見かけるタイプの、他のエリアから少し切り離された半閉鎖空間で、“ストーリーテリング”などにピッタリな雰囲気の空間だったようです。ちゃんと“おはなし”と“子ども”の事を理解した上での設計だと伺えます。
市民向けの説明会の時には、武雄市図書館で活動するボランティアから、改修に際して“おはなしの部屋”はどうなるのか?、おはなしの雰囲気が保たれる場であるよう配慮されるのかと言った心配が上がり、市側は“配慮します”と言ったそうです。
武雄市図書館は『代官山蔦屋』という商業施設を真似て改修されました。“おはなしの部屋”が商業施設にある“プレイコーナー”の様に変えられてしまうのも仕方が無いことなのでしょう。

◎歴史資料とレンタルビデオ
武雄市図書館について、図書館の事ばかりをお伝えしてきましたが、実は、この図書館が入っている建物『エポカル武雄』には、歴史資料館が同居しています。
ここには鎖国時代に佐賀藩の鍋島茂義が集めた、百冊を超える蘭学書や天球儀、大砲など、貴重な蘭学資料が収蔵され、その価値は他の博物館の特別展に貸し出しされる程高いものです。そして、この貴重な資料を展示する為に工夫を凝らした『蘭学館』というスペースが、エポカル武雄の入り口近くに設置され、武雄市民はいつでも気軽に郷土の誇るべき資料を目にする事ができるようになっていました。
武雄市図書館TSUTAYA化計画が発表された当初から、『蘭学館』の扱いを危惧する声はありました。11月に行われた市民説明会で“蘭学館はどうなるのか”と市民が質問した際には市教育委員側が“蘭学館に対する改修予算はついていない”と答えたそうです。12月議会中も“蘭学館”がどうなるかについては、ギリギリまで発表がありませんでした。そして“ギリギリまで見当したが、こうするしかなかった”結果として12月議会で発表されたのが、『蘭学館』をTUTAYAのレンタルビデオコーナーにすることでした。
エポカル武雄にはテーマ展示室やメディアホールというイベント時に使うスペースがあるので、蘭学館の資料はここに移動させるから全く問題は無いし、そもそも蘭学館の利用者は少なかった(入館者の実数は市側も記録していない)のだから大丈夫なのだと言うのです。その上市長は自身のTwitterで「蘭学館、あのまま残しておくことが歴史に対する冒涜だと思った。」と言い、議会では「蘭学館は設計ミスです」と言い、老朽化した市庁舎を立て替える時には蘭学館をそちらに作ると言いました。
理由になっていません。“蘭学館”という場が悪いというなら、新市庁舎が完成してから蘭学資料を移動するのが筋です。
郷土資料という市民の誇りを、工夫を凝らして設えた一等地から建物の奥へ移動し、市民の誇りを展示していた一等地に“レンタルビデオ店”を誘致する・・・そういう感覚で改修・改革を進めているのが、新武雄市図書館です *7

◎武雄市図書館に疑問を持つ団体
前回お知らせしたように、武雄市図書館改修の進め方に疑問を持った市民が『武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会』を立ち上げ、勉強会などを開きながら市内で活動しています。
また最近では、利用規約などが発表されその問題点をピンポイントでつく事が出来るようになったためか、『日本書籍出版協会』が武雄市に質問状を出しました。武雄市側の答えは今までの主張と全く変わらず、“これまでの公共図書館を超える価値の高い図書館を実現するのはCCCにしか出来ない”“全て適法で問題は無い”といった内容です。
これまでの物を含めると、以下のような団体から武雄市に対して書面が送られたことになります。
  • 日本書籍出版協会[2013/3/4]『武雄市図書館に関する質問書』
  • 日本文藝家協会[2012/9/18]『声明文・要望 「図書館業務の民間委託についての提言」』
  • 日本図書館協会[2012/5/30]『日本図書館協会の見解・意見・要望「武雄市の新・図書館構想について」』
  • 図書館問題研究会[2012/5/28]『武雄市の新・図書館構想における個人情報の取り扱いについての要請』
残念ですが、私はこれらの団体に納得のゆく説明がなされたのを見た事がありません。

[2013年3月]

武雄市図書館がオープンしてからの評価と考察:

◎新図書館がオープンしてからの反響
4月1日オープンに合わせて、新聞やテレビで『武雄市図書館』が何度も取り上げられました。皆さんも何かしらのニュースを目にしたのではないでしょうか?
佐賀新聞によれば、5月1日に来館者が10万人を突破し、図書館の利用登録者数は4月30日時点で1万3909人。このうち市外居住者は46・9%。Tカードを選んだ人は全体の95・6%を占めているとのことで、オープン当初や休日は駐車場が足りない程の混雑ぶりだそうです。
そして利用者からは、おしゃれで都会的な空間でコーヒーを飲みながら本を読んだりおしゃべりをしたり出来るという好評価や、背の高い書架に囲まれた空間が、外国映画に出てくる図書館の様で素敵だというコメントがありました。
逆に、商業主義に走りすぎているのではという苦言や、面白いけど図書館じゃないという意見もありました。
以前より武雄市図書館を使っている人からは、以前が良い図書館だったので残念だという意見や、以前より席が増えたけれどスターバックス利用者が席を占有するので本当の図書館利用者が座る場所が減ったという嘆きも聞かれます。
図書館関係者からは以下の様な意見も出ました。
新武雄市図書館は、県内の公共図書館の司書の関心も呼んでいる。見学した司書たちからは賛否両論の反応が漏れた。
ある司書は「とてもおしゃれだと思う。ハイセンスで都会的。高齢者は行きにくいが、若年層から50代には魅力だろう」と評価。別の司書は「日ごろ図書館に行ったことがない人には新鮮に映るだろう。実際はうちにある本ばかりで、地元の人にどう活用してもらうか、教えられるところもある」と話した。
一方、厳しい見方も。「児童書コーナーに、販売と貸し出しの本が混在して分かりづらいのは問題」「書庫の本まで何でも出しているので、古い本も多く、書棚全体の鮮度を落としている。書架に魅力がない」と評した。別の司書は「公共の図書館でポイントが付与されるのに、Tカード加盟店でしか使えないのは平等でない。特定の企業に利益を供与していることになる」と指摘した。
<県内の司書は賛否両論 武雄市図書館>(佐賀新聞2013年04月25日)
賛否両論様々な意見が出ていますが、マスコミの反応は概ね“絶賛”だと感じます。しかしそれは“オシャレ”で“新しい試み”という部分が評価されているのであって“図書館”として評価されている報道や意見はまだ目にしたことがありません。
また残念な事に、マスコミが事実と違う事を伝えている部分も沢山あります。その一つに「年間1000万円の経費削減」というのがあります。
武雄市のホームページ上にある『平成25年度予算に関する説明書(P97)』を見ると、『図書館費[1億5311万3円] (図書館・歴史資料館指定管理料 1億1000万0円含む)』とあり、前年度[1億2479万円5円]と比べて経費増加になっている事がわかります。これは、CCCに委託するのが図書館部分だけで、歴史資料館については別途予算が必要だからです。
マスコミに関しては、武雄市長がTwitterでこのように呟いていました。
『武雄市長 樋渡啓祐 @hiwa1118「とある案件で、迷った末、電通と組むことにした。4月から起動させる。(2013年1月30日 11:30 PM)」』
皆さんご存知かと思いますが、“電通”は日本最大の広告代理店です。

◎“図書館”としての新武雄市図書館
365日午前9時〜午後9時(従来は午前10時〜午後6時)開館で休みが無い。書庫を無くして約20万冊の本を全て開架にし自由に手に取れるようにした。CD・DVDの有料レンタル、雑誌や新刊本、漫画本、それに絵本のキャラクターグッズ等の販売がある。カフェがある。自動貸出機を使って本を借りると「Tカード」にポイントがたまる。日本中の人が図書館利用者になれる。これらは新武雄市図書館の特徴の一部です。この特徴を一つ一つ考察してみます。
365日午前9時〜午後9時開館で休みが無いので、利用者が多く混雑した日は書架整理等を開館時間外に行う場合があるそうです。またシフト制で働いているのでしょうから、行事や運営について全員そろって話し合いをすることはかなり難しそうです。
書庫を無くして約20万冊の本を全て開架にして自由に手に取れるようにしたとありますが、2階の幅1.5メートルのキャットウォークにある書架は高さ3.9メートルです。手に取るには2メートルを超える足場が必要なので職員の手を借りなければなりませんし、下から眺めただけでは背表紙の文字を読むことさえ困難でしょう。また、キャットウォークに2メートルを超える脚立を置きその上に登った時にバランスを崩したらと思うと、高所の本を安易に手に取ることは出来ないと感じます。それから、2階のキャットウォークは一部立ち入り禁止になってい ますから、そこは閉架と同じです。
ところで、所蔵する本を全て開架にすることは良い事でしょうか?“書棚の鮮度が落ちる”という意見を先に紹介しましたが、それは見た目の魅力が落ちるだけではありません。医療関係の本を新旧取り混ぜて置いておくことで、古い本を選んだ利用者がそれを古い情報と気づかずに信じてしまったら拙くありませんか?パソコンも歴史も科学も、新しいことがどんどんわかって、あっという間に情報が古くなってしまいます。文藝書なら、古い物でも問題無いかもしれません。でも、古い本が利用者に不利益をもたらす場合があることを考えると、全ての本を同等に開架するのは良くないでしょう。
全ての本を利用者に自由に手に取ってもらう方法として“公開書庫”を設えている図書館があります。利用者が自由に入れるよう設計した書庫のことです。これならば、書庫の本は古い物と認識しながら選べるので、新しい物と勘違いせずにすみます。
視聴覚資料の有料レンタルや書籍の販売、カフェ併設は図書館機能と無関係ですが、最短で児童コーナーに行くには、販売とカフェがある商業エリアを通り抜ける必要があります *8 。更に販売される本と貸出しされる本を置いてある棚が向かい合わせになっていて、販売スペースで親から「それは売り物だからダメ」と言われて困惑している幼児を見たという声もあります。ぬいぐるみ等のおもちゃ類も多く置かれているようなので、誘惑が多く、商売としては正しいのでしょうが、図書館としては問題だと思います。
小学生の子を持つ方が「今まで図書館には安心して子どもを送り出せた。商業施設になった図書館には、今までの様に安心して子どもを送り出せないと思う。お金を使わせようとする誘惑がある場所だから。」と言っていたそうです。
図書館での児童サービスは『公共性および社会性の育成』『公共性の理解』といった物を含みます。これは文字通り、子どもは図書館で大人と同じ空間を使うことで社会性を育て公共性を学ぶということですが、武雄市図書館ではこれが崩れていると感じます。
それから、児童コーナの書架にも背が高い物があり、絵本が3mほどの高さに面見せで置いてあります。子どもはおろか、大人でも手が届かない高さです。
書架を天井まで高くするのは“代官山蔦屋”に用いられた空間演出と同じ手法ですが、カフェや書店を入れる為に、キャットウォークを増設したり書庫や館長室を無くして書架を入れる等、床面積を広げる工夫だけでは間に合わず、結果、書架の背を高くしなければ本が入らなかったという面もあるようです。ユニバーサルデザインや地震で本が落ちる危険を考えているのか、疑問が残ります。
カフェがあることで、本を読んだり調べ物や勉強をしたい人が座る場所が旧図書館と比べて減ったようです *9 。滞在型図書館としてカフェを併設している図書館は増えていますが、閲覧席とカフェ席を明確に区切らないことで、飲食したくない利用者に不満をもたらしているようです。
「Tカード」にポイントがたまることの是非は、7月の会報でお知らせした通りです。
日本中の人が図書館利用者になれるそうですが、休みの日に市外の人が押し寄せ混雑し、市内の利用者が利用し難くなったりすれば、公共図書館として本末転倒だと思います。
普通、図書館の利用者は設置自治体の住民かその自治体に通勤・通学している者や協定を結んだ周辺自治体の住民位までです。これは図書館の利用者が増えすぎると、設置自治体住民に十分なサービスを提供出来なくなるからです。公共図書館利用の優先順位は設置自治体の住民が第一です。
しかし、武雄市図書館は市外からの利用者にお金を落としてもらう“読書アミューズメント施設” *10 という観光施設として改修されたのです。

◎法律の話
「図書館法第17条 公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」
「著作権法38条4項 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により公衆に提供することができる。」
武雄市図書館は、商業部分と図書館部分の境が曖昧であり自動貸出機も本を借りる時と書籍を買う時両方に使える物で、図書館を営利目的に使用しているのではないかという意見もあります。つまり、運営次第では違法の可能性があると指摘されているのです。

◎図書館の改修は必要だったのか?
3月13日の市議会で、武雄市図書館に合併特例債が利用されることが明かされました。これは、改修費4億5千万円のうち武雄市が一般財源から1億7500万円、合併特例債から2億7500万円出すという計画です。
合併特例債は簡単に言うと「国からお金を借りて返すと、返す金額70%が交付される」という制度なので国のお金から約2億円が武雄市図書館のために使われることになります。2000年10月に完成したばかりのまだ新しく綺麗だった武雄市図書館・歴史資料館を改修する為に、国のお金が2億円も使われるのです。
武雄市民からは図書館の分館を望む声があります。また、武雄市図書館のすぐ側には本屋もカフェも入った『ゆめタウン』があります。このような環境において、図書館に本屋とカフェを作る為に国からの2億円を含む4.5億円もの税金を使うのです。これは払った金額と得たものとが釣り合うのか、大きな疑問が残ります。

新武雄市図書館にはまだまだ伝えきれない問題が沢山あるのですが、今回はこの辺で筆を置きたいと思います。
改修前の図書館が出来た経緯や武雄市民から見た“武雄市図書館問題”に興味のある方は『月刊社会教育 4月号』に掲載された“武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会代表世話人 井上一夫”さんの文章をお読み下さい。改修前の図書館が市民の知的拠点として重要な役割を担っていたことがわかります。

[2013年5月]
*1: 『図書館の自由に関する宣言』は、戦前における思想善導機関として機能した図書館の歴史を反省し、日本国憲法を踏まえて宣言されたもの。
*2: 後に、自動貸出機利用で1日1回3ポイント付与と決定した。
*3: 販売される雑誌のバックナンバーも全て閲覧・購入出来るのかは不明。
*4: 平成25年3月28日付け『武雄市図書館・歴史資料 館協議会資料』中の『平成24年度事業報告』に「現在の書籍数 260冊」「現在の登録者数 431人」とある。
*5: 新図書館オープン後には『なるべくお子様とご一緒に図書館カウンターまでお越しくだい。』と変更された。ちなみにネット上で福岡、佐賀、長崎の全図書館の利用規約を調べたところ(抜けや規約変更等あるかと思うが)、保護者同伴必須は那珂川町の図書館だけであり、保護者同伴必須としている図書館は稀だと確認している。
*6: Tカード番号で個人を特定出来るか出来ないかについては、現在でも様々な議論が交わされている。言うまでもなく、何時・誰が・どこにいたという利用履歴は個人情報。
*7: 市内には既に、昭和自動車株式会社が運営する「TSUTAYA武雄店」が存在している。
*8: 武雄市図書館ホームページの“館内マップ”で館内の様子をストリートビューで見ることが出来る。
*9: 図書館の座席とスターバックス席の関係については、商品購入必須エリア外で商品購入を迫ったとして報道され図書館側もサイト内にお詫びを掲載したという経緯がある。また、座席数については現時点でもハッキリしない部分がある。
*10: 『図書館のすべてがわかる本 4 図書館をもっと活用しよう』(岩崎 書店)に武雄市図書館が「図書館と書店をくみあわせた「読書アミューズメント施設」へと生まれかわりました。」と紹介されている。尚、本書の発行は開館前の2013年3月4日。

■ 関連記事

今日のつぶやき

  • 【市況】為替を見るとリスクオフの流れでしょうか。リスクオフして円高に振れなくなったのは金利差をどう評価するかを迷っているのだと見ます。EURUSD, EURJPYが下げてて、AUDJPYも下げに転じています。欧州株価はEUR安を好感して上げているということになるでしょうか。2013-06-27 00:27:51 OpenTween
  • チャート読んで、市場心理が読める様になりたい。2013-06-27 00:30:30 OpenTween
  • RT @fmht7: 日野市立図書館のほのぼの川柳 https://t.co/3ysKRkeIkc 「図書館で孫に教える下調べ」「本買えず図書館で読む老いの余暇」といったニーズを武雄市の図書館のような商業施設が受け止めることができるのでしょうか。 #千円図書館 #takeoli2013-06-27 17:37:18 OpenTween
  • RT @sasakimakoto: 伊万里市民図書館の視察にきています。もやい九州のメンバー28名と一緒です。2013-06-27 18:34:13 twicca
  • @y2k_la12 「市長の図書館」であることを象徴しているのでしょうね。「オレが作った図書館が気にいらなければ、来なければ良い」という図書館です。 http://t.co/vA2UNIADHf #takeolibrary #千円図書館2013-06-27 22:18:53 webで y2k_la12宛て
  • 武雄市の高校生という方からメールを頂いたのですが、裏を取るのはちょっと難しいですね。これ。2013-06-27 22:21:11 OpenTween
  • きちんとお返事書いてみます。2013-06-27 22:23:28 OpenTween
以上、1 日分です。

指定日の日記を表示

前月 2013年06月 翌月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

最近の日記

2017年02月21日

BIGの投票内容(発番)につきまして(2017.02.20)

2016年06月29日

「SEI-Net」不正侵入事件にみる佐賀県教育委員会の杜撰

2015年11月26日

武雄市図書館から“地方自治”を考える!

2015年11月21日

シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(34) - 「第3のツタヤ図書館にデキレース疑惑 内部資料を独占入手!」落ち穂拾い

2015年10月30日

シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(33) - 海老名市ツタヤ館運営の行方

2015年10月26日

シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(32) - 10月26日付 文化通信「TRC、CCCとの関係解消へ」

2015年10月25日

シリーズ武雄市TSUTAYA図書館(31) - 続・検証「9つの市民価値」

分野別タイトル一覧


全て
CLIP
SYA!nikki
book
freebsd
hns
magic
おさけ
おしごと
お買いもの
ぐる
ごはん
アクセシビリティ
オープンソース
セキュリティ
音楽
地域情報化
電子自治体
日記

keikuma on Twitter

keikuma Name:前田勝之
Location:長崎市
Web:http://www.nantok...
Bio:前田勝之(まえだかつゆき)。長崎在住。コンサル、SE、プログラマー、 なんとか株式会社代表、非常勤講師(情報セキュリティ)。 セキュアド、テクニカルエンジニア(SV,NW)。サーバ管理とWeb日記を10年ほど。 ネットとリアルの接点に関心あり。食べること・歌うこと・愛すること・作ること・飲むこと。おいしいものがぜんぶすき。

サイト内検索

Google AdSense

Powered by hns-2.19.9, HyperNikkiSystem Project